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キューバ代表が準決勝へ! アメリカ行き決定の快進撃、原動力はNPB勢【WBC2023コラム】

2023/03/16

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世界の表舞台に帰ってきた「赤の軍団」

 WBCでは初対戦となるオーストラリアを撃破し、マイアミ行きのチケットを手にしたと同時に、2004年のアテネ五輪決勝のリベンジを狙うオーストラリアの野望を返り討ちにしたキューバ。その姿はかつて“赤い稲妻”として恐れられた一発頼みのパワー野球ではなく、隙のない守備力とシュアな打撃に裏打ちされた手堅い野球だ。追加点が欲しい終盤には、得点には繋がらなかったものの送りバントも決めてみせた。
 
 実際、今大会でも、本塁打は台湾戦の2発のみであり、つなぐ打線と細かい投手リレーで勝ってきたチームだ。大会2連敗スタートから立ち直り、3連勝で4強入りを決めたメンタルの強さも持ち合わせている。
 

 
 米国マイアミとアリゾナで行われているC組、D組には中南米のライバルが名を連ねている。そうした中南米各国の中で、キューバ野球の現在地は、メキシコ、プエルトリコ、ドミニカ共和国、ベネズエラの後塵を拝している。
 
 しかし、この日のように、一発がなくとも好機を確実に得点に結びつける打線は、準決勝、あるいは決勝の舞台でも相手の脅威となるだろう。加えて、この日の相手のオーストラリアとともに、ノーエラー(記録上はキューバの打撃妨害による失策1)の締まった試合をモノにしたことも、ナインの自信につながったことは間違いないだろう。キューバは今大会を通じ、世界の野球地図の中心に戻りつつあるのだ。
 
 勝ったキューバはもちろん、惜しくも敗れたオーストラリアも素晴らしかった。戦前の予想をはるかに上回るパフォーマンスを見せ、キューバに対し、終始、プレッシャーをかけた粘り強さも特筆すべきだろう。1次ラウンドでは戦前の予想を覆し、韓国を破ってB組2位突破を決め、この準々決勝でも、古豪キューバを相手に一歩も引かない戦いを見せた。もはや、オーストラリアを“新興国”を呼ぶのは失礼にあたるだろう。
 
 今回の侍ジャパンは“史上最強”との呼び声が高い。確かにそれは事実かもしれないが、次回大会においても、その時の最強メンバーを集め、再び“史上最強”としなければ、決勝ラウンドどころか、1次ラウンドで思わぬ敗退を喫する可能性も少なくない。そう思わざるを得ないほど、他国のレベルは大会を追う毎に上がってきているのだ。

 
【了】

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