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キューバ代表が準決勝へ! アメリカ行き決定の快進撃、原動力はNPB勢【WBC2023コラム】

2023/03/16

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予想外の展開にも慌てなかったキューバナイン

 キューバの先発は中日のロドリゲス。昨シーズンは先発からセットアッパーに転向したことで、その才能が開花。56試合に登板し、6勝2敗39ホールド、被本塁打0、防御率1.15の好成績を残し、侍ジャパンの阪神・湯浅とともにセ・リーグの最優秀中継ぎ投手賞を受賞した。
 
 A組の開幕戦で先発し、オランダ打線を相手に4回66球を6奪三振、1失点の内容。2番手のガルシア、3番手のビエラが打ち込まれ、試合には敗れはしたもののゲームを作った。
 さらに、前日練習を行った14日には「東京ドーム、大好きです」と語ったように、昨シーズン、4試合の登板で1勝3セーブと東京ドームのマウンドを得意としていることから、この大一番の先発に指名された。
 

 
 MAX156キロのストレートと縦に落ちるスライダーを軸に組み立て、初回から2三振を奪う上々の立ち上がりを見せる。しかし2回、先頭の4番、元オリックスのジョージに、あわや柵越えのセンターオーバーの二塁打を許すと、ホワイトフィールドが送りバントを決め、続くウィングローブが強烈な右前打を放ち、先制を許す。
 
 その裏、キューバは第1ラウンド8打席無安打と不振をかこっていた日本ハムのマルティネスが、止めたバットに当たる幸運な右前打で今大会初ヒット。続くドレイクが歩き、チャンスを迎えるが、ムヒカが倒れ、得点に結びつかない。
 
 オーストラリア先発のケントは、初回から制球の悪さをのぞかせ、毎回、四球を与えるものの、その荒れ球が逆に的を絞らせないことに繋がり、キューバ打線をのらりくらりとかわし、2回を被安打1、無失点で与えられた役割を全うした。
 
 3回、ロドリゲスが二死から突如、制球を乱し3連続四球で満塁のピンチを招くが、4番ジョージを遊ゴロに抑え、何とかこの回をしのぐ。
 
 3回から登板したオーストラリアの二番手ニューンボーンは150キロに迫るストレートが武器だが、ストライクが入らす、いきなりサントスを歩かせると、続くモンカダに151キロの速球を痛打され、レフトフェンス直撃の二塁打、ロベルトの遊ゴロの間にランナーが帰り同点とする。
 
 4回、制球難に苦しむロドリゲスが、一死から連続四球。ここでキューバベンチはロドリゲスをあきらめ、台湾戦で第2先発として、無失点の好投を見せたロメロにスイッチ、後続を抑える。
 
 試合が大きく動いたのは5回裏のキューバの攻撃。ガイヤーがサントスのヒットと四球でピンチを招き、代わったホランドはいきなりロベルトに死球を与え無死満塁とすると、デスパイネがキッチリと右翼へ犠飛を放ち、この試合初めてリードを奪う。続くアルエバルエナの左前打で再び満塁となったところで、オーストラリアは投手をホランドからケネディに交代。しかし、目を覚ましたキューバ打線はとどまることを知らず、ギベルトがボールに逆らわない見事な打撃で、右前への2点タイムリーを放ち、3点差とする。
 
 6回、オーストラリアは、代わったエリアスに襲い掛かり、ホワイトフィールドは内野安打で出塁すると、ウィングローブがライトスタンドへ2ランを放ち、1点差に詰め寄る。
 
 8回からキューバのマウンド上がったのは、ソフトバンクの守護神リバン・モイネロだ。NPB6年目の昨シーズン、53試合で24セーブ、防御率1.03を記録した左の剛腕は、2四球を与えるも、MAX154キロの速球で2奪三振を奪い、オーストラリアの追撃を許さない。そして最終回、キューバのマウンドを任されたのは中日で昨シーズン、28試合連続無失点という記録を達成し、セ・リーグのセーブ王に輝いたライデル・マルティネス。この回を三者凡退、最後は4番ジョージを138キロのスプリットで三振斬り。期待に応えて1点差で逃げ切ってみせた。
 
 試合後、キューバのアルマンド・ヨンソン監督は、亡命したメジャーリーガーを代表に招集したことに触れ「彼らを受け入れることは、とても難しい作業だった。参加を嫌がる選手もいたが、少しずつチームに溶け込んでくれて満足している」とし、続けて「キューバの野球関係者は非常に感動している。何年も前からキューバは勝利を望んでいた。新しい、喜びの表情を届けることができている。そして今、努力して成功を収めている」と“キューバ復権”を高らかに宣言した。

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