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【2022広島・戦力分析】投手・一塁手・三塁手の底上げが課題。林と坂倉はコンバートの積極的検討を

2022/03/18

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産経新聞社、DELTA・竹下弘道



5.総括

 広島の補強ポイントは投手・一塁手・三塁手・右翼手。右翼手を他チーム並み(±0点)に埋められたとしても、鈴木が稼いだプラスが丸々失われるため、得失点差は約60点の悪化が予想される。他ポジションが変わらないという前提だと、残る投手・一塁手・三塁手の内、2つはマイナスを解消できないとAクラスは厳しい。
 
 これらに対する対応を見ると、投手には黒原、森、ターリー、アンダーソン、一塁手にはマクブルームを獲得。外野手には有望株の正随と宇草が控えていることに加えて、中村健、末包を獲得している。これらのポジションは一定の底上げが見込めると思われる。

 一方、最大のマイナスを計上している三塁手には動きがなかったため、ここは現有戦力の働きに期待することになるだろう。林の成長、三塁に軸足を移しつつある田中広輔の復活、そして坂倉のコンバートの成功次第ということになりそうだ。近藤健介(日本ハム)や今成亮太(元阪神)のように、捕手が三塁守備で高い適性を見せるケースは多い。坂倉の才能を最大限に引き出すためにも、佐々岡監督にはその適性を探る積極的な動きを期待したい。
 
DELTAアナリスト・竹下弘道
 
[1] 寄与は「平均的な選手でそのポジションを埋める場合と比べて、得失点差に何点のプラス(マイナス)をもたらしたか」を表す。平均を基準とする理由は、得失点差が平均を基準とする数値だからだ。「全ポジションが平均的な選手で構成されたチーム」は得失点差が±0点となる。このチームに対して「各ポジションで得失点差を何点分上積みしたか」が分かれば、その合計からチームの得失点差を説明することができる。
[2] 厳密に言えば投手も打撃で得点を増やすことができるが、投球と比べて影響が小さいため、ここでは考慮しないものとした。
[3] これは、弱点を底上げする方が獲得機会・必要年俸の点でコストパフォーマンスが高いためである。「±0点のポジション」に「+20点の選手」を充てるのと、「-20点のポジション」に「±0点の選手」を充てるのは、どちらも20点の得失点差の改善が見込める。しかし、「+20点の選手」よりも「±0点の選手」の方が獲得しやすく、年俸も安く抑えられる。
[4] 野手はwRAA+UZR+守備位置補正、投手はFIPのみで計算した。野手は一軍の規定打席(443打席)あたり、投手は一軍の規定投球回(143投球回)あたりの数値としている。
[5] これは昨季の宇草のBABIPが極めて高いためである。BABIPとはフィールド上に飛んだ打球が安打になった割合を表す。BABIPは打率の構成要素となる指標で、少ない打席数の場合、能力から乖離した数値となる傾向が強い。少ない打席数の打者が極端な高打率になったり、逆に低打率になったりすることは度々あるが、これはこのBABIPが原因である場合が多い。昨季の宇草が記録したBABIP.382は一流打者でもほぼ持続不可能な数値で、実力に対して極めて高く出ている可能性が高い。このことによって宇草の打率は実力以上に押し上げられている可能性がある。
[6] データは竹下弘道・DELTA算出
 

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DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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