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川相昌弘、ドラフト4位の肖像#2――「お前は普通科高校に行って、大学に行ったほうがいいって言われました」

ドラフト四位指名―ドラヨンに結果を残している選手が多い。ドラフト一位指名は、その時点で同年代の野球少年の最前列にいると認められたことになる。その意味で、ドラヨンは、二列目以降の男たちとも言える。そんな“ドラヨン”で入団した野球選手を追った10/16発売の新刊「ドラヨン」から一部抜粋で先行公開する。

2019/10/15

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田崎健太



「あんな投球をされたら打てっこない」

 岡山南は、水島工業、作陽、西大寺、玉島商業を下して決勝に進出した。中でもシード校だった作陽を川相は二安打完封している。決勝の相手は玉野だった。
 
 決勝前日、『山陽新聞』は〈決勝の見所〉でこれまでの川相の好投ぶりに触れている。
 
〈川相と玉野打線の対決が焦点。(中略)川相はこれまで当たった投手とは球の力が数段違う。内角をえぐるシュート、球速を殺したカーブが切れに切れている。玉野が過去4試合のように振幅の大きい振りをするようだと一転して沈黙する恐れも。玉野としては制球に不安の残る川相の立ち上がりをどう攻めるかがポイントとなる〉(一九八一年七月二八日)
  
 決勝は延長戦までもつれた。一○回裏、四番の本間が中堅前に安打を打ち、サヨナラ勝ち。岡山南は夏の甲子園、初出場を決めた。試合後、玉野の監督、平谷は「あんな投球をされたら打てっこない」と四安打に抑えた川相の投球を絶賛している。
 
 二年生ですから、気楽な気持ちで投げられたというのが良かったんでしょうねと川相は振り返る。
 

 
「要所でシュート、スライダーがはまったな、という感じはありました」
 
 準々決勝から決勝まで三日連続、川相は最後まで投げきっている。準々決勝と決勝は延長一○回。勝ち進んでいるという気持ちの高ぶりもあり、疲れは感じなかったという。しかし、気がつかないところで彼の躯に異変が生じていた。
 

 
田崎健太 たざき・けんた
1968年3月13日、京都市生まれ。ノンフィクション作家。
早稲田大学法学部卒業後、小学館に入社。『週刊ポスト』編集部などを経て、1999年末に退社。スポーツを中心に人物ノンフィクションを手掛け、各メディアで幅広く活躍する。著書に『W杯に群がる男たち―巨大サッカービジネスの闇―』(新潮文庫)、『偶然完全 勝新太郎伝』(講談社)、『維新漂流 中田宏は何を見たのか』(集英社インターナショナル)、『ザ・キングファーザー』、『ドライチ』『ドラガイ』(カンゼン)、『球童 伊良部秀輝伝』(講談社 ミズノスポーツライター賞優秀賞)、『真説・長州力 1951-2015』(集英社インターナショナル)
『電通とFIFA サッカーに群がる男たち』(光文社新書)など。   
 
 

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