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日本のショートストップは、なぜ、メジャーで通用しないのか。異国を知る者たちが証言する「確実にアウトにするための守備」の盲点【野球考#1】

2017年のプロ野球はシーズンインに向け、選手たちは続々と自主トレーニングに励んでいる。シーズン開幕がいまから待ち遠しいが、ベースボールチャンネルでは、シーズン中とは異なる視点から野球を考察していきたい。その名も「野球考」。第1回目は野球の“花形”ともいわれるショートストップについて、中南米のアカデミーを深く取材するスポーツライター中島大輔氏に日本人ショートストップの課題、メジャーリーガーを多く輩出する中南米の選手との違いについて考察してもらった。(2017年1月11日配信分、再掲載)

2020/04/21

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日本人内野手として成功を収めた井口資仁の指摘

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨む侍ジャパンの代表候補を見渡すと明らかなように、現在、プロ野球ではショートが人材難に陥っている。坂本勇人(読売ジャイアンツ)という絶対的なレギュラーがいる一方、その座を脅かす者がまったく見当たらないのだ。
 
 これまでメジャーリーグに挑んだ日本人遊撃手は、ことごとくその壁に跳ね返された。世界ではショートこそ花形のポジションであり、身体能力や守備力の高い選手が守っている。メジャー超一流クラスの強肩、身体のバネ、体幹の強さを見ていると、日本人との身体能力の違いに絶望的になる。
 
 しかし、諸手を挙げて降参するしかないのだろうか。
 
「日本人でショートとしてバリバリやれる選手が見たいですね」
 
 メジャーに移籍した日本人内野手として数少ない成功を収めた一人の井口資仁(千葉ロッテマリーンズ)が、そう語っていたことがある。日本の問題点として、井口は二つ挙げた。
 
「人工芝ではバウンドが読めるし、打った瞬間にどこに来るかわかる。イレギュラーもないですし、その場に待ってでも捕れます。人工芝が内野手を下手にさせているのはあると思います」

 メジャーでは30球団のうち28球団が天然芝でプレーしているのに対し、日本では12球団のうち9球団が人工芝の球場だ。渡米し、慣れない環境に対応できない点は否めない。
 
「でも日本人だってみんな、小さい頃は土のグラウンドでやっていますからね」。そう言った井口は、問題の根幹を指摘した。「人工芝だからどうのこうのと言われますけど、それはプロに入って楽をしているだけの話です」
 
 現在プロ野球で最も守備力の高いショートが、今宮健太(福岡ソフトバンクホークス)だ。身体のバネと強肩は日本屈指だが、世界トップレベルと比べると、井口の目にはまだまだと映っている。
 
「日本人ショートだったら今宮が一番うまいと思いますけど、それでも確実にアウトにするための守備になると思います。彼は肩が強いのでね。天然芝とか土になると、“1個グッと持つ”のができなくなっちゃうので」
 
 打球の勢いが死なない人工芝では三遊間深くのゴロを待って捕っても、強肩の今宮ならアウトにできる。対して天然芝や土のグラウンドでは打球の勢いが弱まるため、前にチャージしないとアウトにできない。それが「楽をする」の意味である。ちなみに“1個グッと持つ”とは、地面の反発力が人工芝より落ちる天然芝や土では、上半身や体幹の強さが求められるということだ。

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