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アウトマンらの放出は成功?失敗…?今季のドジャースのトレードデッドラインを総括!【コラム】

2025/08/13 NEW

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産経新聞社



(左から)コール、デーブロバーツ、アウトマン

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 トレード期限を迎えたメジャーリーグ。今季は大谷翔平と本塁打王争いをしていたエウヘニオ・スアレス、メジャー屈指の強打者ラファエル・デバースなど大物選手のトレードが発表された。ロサンゼルス・ドジャースでは前述したような大物クラスの動きは無かったが、複数の選手を放出しプロスペクトを獲得した。今回は、ドジャースのトレードデッドラインの動きについて纏めた。(文:Eli)

 

 
ドジャーストレードデッドライン総括
 今季のトレードデッドラインで、ロサンゼルス・ドジャースは「売り」と「買い」の両面に動いた。リーグ平均程度の打撃力が見込めるアレックス・コールと、セットアッパーのブロック・スチュワートを獲得する一方で、余剰戦力となっていたダスティン・メイ、ジェームス・アウトマン、ハンター・フェドゥーシャを放出し、プロスペクトを補充した。
 
 ブルペンと両翼外野手に課題を抱えていたドジャースにとって、スチュワートとコールの加入は確かに穴を埋める補強となった。
 
 しかし、ジョアン・ドゥランを獲得したフィラデルフィア・フィリーズ、メイソン・ミラーらを補強したサンティエゴ・パドレス、ライアン・ヘルズリーを加えたニューヨーク・メッツと比べると、戦力の上積みは限定的だ。
 
 ブルペン戦力だけを見れば、メジャートップクラスに躍り出たフィリーズ、パドレス、メッツに対し、ドジャースは依然としてメジャー11位にとどまっている。
 
 複数の記者の報道によれば、ドジャースはインパクトのある補強を模索していたことは事実だ。104マイル(約167キロ)を誇るクローザーのミラー、ツインズのドゥランやグリフィン・ジャックス、野手ではガーディアンズのスティーブン・クワン、カージナルスのラーズ・ヌートバー、ブレンダン・ドノヴァンらの獲得を各球団に打診したとされる。
 
 しかし、最終的には対価の高さなどを理由にすべて撤退し、結果的に穴埋めにとどまる補強に終わった。
 
 余剰戦力+αの放出で戦力の穴を埋めつつ、将来性のある選手を補充できた点は間違いなく“うまい”動きだ。しかし、21世紀初のワールドシリーズ連覇を狙うチームにとって、今回の補強が十分だったかどうかは疑問が残る。
 
 長期契約を結んだベッツ、フリーマン、大谷が全盛期終了に足を突っ込んでいる状態でプロスペクトを確保し継続的に勝てるチーム・ファームシステムを形成することは大事だ。
 
 その一方で今季の勝ちを手にするために十分な体制を整えられたかと言われれば、自信をもってイエスと言える状態ではない。
 

ドジャース入りした注目選手は…?

(左から)コール、スチュワート
 次に、今回のトレードデッドラインでドジャースに加入した注目選手をピックアップした。
 

ブロック・スチュワート

 ブロック・スチュワートはミネソタ・ツインズから獲得したセットアッパー候補だ。33歳で、今季がメジャー7年目。デビューは2016年のドジャースで、その後トロント・ブルージェイズや独立リーグを転々とし、2023年にツインズでブレイクを果たした。
 
 キャリア前半は成績不振によりメジャーでの登板機会が限られ、サービスタイムが積み上がらなかったため、ドジャースは年俸調停を通じて2027年シーズンまで保有可能だ。
 
 投球の軸は、全投球の半分以上を占めるフォーシーム。低いリリースポイントから放たれ、高い回転数による浮き上がる軌道で空振りを奪う。
 
 変化球は主にスイーパーを用い、特に右打者相手では空振り率50%超を誇る。ほかにチェンジアップ、カッター、シンカーも投げる。制圧力はセットアッパーとして十分なレベルだ。
 
 課題は左打者への対応。武器となるチェンジアップとカッターは平均以下で、フォーシーム頼みになりやすい。また、制球力にやや難があり、四球でピンチを招く場面も少なくない。

 

アレックス・コール

 コールはナショナルズから獲得した両翼向きの外野手だ。30歳で今年がメジャー4年目。スチュワート同様、キャリア初期の苦戦によりサービスタイムが少なく、2029年まで保有可能だ。
 
 打撃面では選球眼とコンタクト能力が持ち味で、三振が少なく四球を選べる。一方でパワーは乏しく、128試合に出場した2023年でも本塁打は8本にとどまった。
 
 今季は特に左投手に強く、対左では打率.315、wRC+125を記録している。ドジャースとしては、今季不振の左打者マイケル・コンフォートと併用する右打者としての起用が見込まれる。
 
 守備は両翼で平均以上の力を持つため、パワー不足を克服できれば長期的にレギュラーを務められる可能性がある。ただし、30歳という年齢を考えるとピークはあと2~3年と見られ、その間に外野の有望株へスムーズに世代交代できれば理想だ。
 

ジェームス・ティブス

 一連のトレードで最も評価の高いプロスペクトがレッドソックスから獲得したジェームス・ティブスだ。2024年ドラフトで1巡目全体13位指名を受けた逸材だ。
 
 ジャイアンツから指名を受けラファエル・デバースとのトレードでレッドソックスへと移籍、その後ドジャースのダスティン・メイとのトレードでドジャースへ移籍した。
 
 広角へヒットを打ち、コンスタントにフライを打てる能力が評価されており、最低でもプラトーン起用でのメジャー昇格はできると予測されている。
 
 元はジャイアンツからの指名だが、当時ジャイアンツの編成トップを務めていたのが現在ドジャース特別顧問のファーハン・ザイディだ。
 
 トミー・エドマン、急成長を見せる外野プロスペクトのマイク・シロタのように近年ドジャースは気に入った選手を獲って成功させる例を増やしており、今回のティブスも同じように急成長を見せるかもしれない。

余剰戦力の放出

(左から)アウトマン、メイ
 
 今回のデッドラインで目立ったのは、余剰戦力の放出だ。捕手のフェドゥーシャ、外野手のアウトマンはマイナーでの成績は良いが、メジャーでの出場機会はほぼなくなっていた。
 
 メイは今季イニングイーターとして山本由伸に次ぐチーム2位の104.0回を消化していたが、クレイトン・カーショー、タイラー・グラスノー、ブレイク・スネル、大谷翔平とエースピッチャーが次々と復帰。
 
 若手の登板機会も確保する必要があり、先発ローテでの立ち位置を失っていた。加えて今季終了後にFAである。
 
 この3人のような自チーム内で使う予定の無い選手で補強+プロスペクト補充ができたのは良い動きだ。フェドゥーシャやアウトマンなどは移籍先で開花する可能性はあるが、既にドジャース内では使うスペースはないため後悔することはほぼ無いだろう。

 

 
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