“ドジャース王朝”はいつまで続く…?ドジャースのロースター、プロスペクトから数年後の戦力図を紐解く!【コラム】
2025/08/07 NEW
産経新聞社

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目まぐるしく勢力図が変化するメジャーリーグの世界。その中で今季も安定した強さを誇っているロサンゼルス・ドジャースだが、チームを牽引する大谷翔平らMVPトリオにもいずれは衰退期が訪れる。その時にドジャースの黄金期は終焉を迎えてしまうのか、それとも、新たなコアとなる選手が現れるのか。そこで今回は、ドジャースの数年後の構想に着目した。(文:Eli)
2024-25のオフシーズン、ロサンゼルス・ドジャースはタナ―・スコット、カービィ・イエーツに高コストを賭けたブルペン補強を積極的に行った。この動きの最大の理由は「デッドラインでの補強回避」だ。
デッドラインでのトレード補強は買い手側の切迫した状況から差し出す対価が高くなる傾向にある。ドジャース編成本部長のアンドリュー・フリードマン氏はこの点をすこぶる嫌っているようである。
その要因の一つとして考えられるのがドジャース主力の高齢化だ。特に打線は深刻でスターティングラインアップ9人のうち、7人が30歳以上となっている。
さらに、今後数年にはムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマン、大谷翔平の全盛期終了という難題がドジャースを襲う。この波をどうにか乗り切るためには超格安で大きな価値を生めるプロスペクトの貢献、そして彼らを無駄遣いしないことが不可欠だ。
現在メジャーレベルに在籍かつレギュラー/半レギュラー起用されているメンバーで2027ドジャースの打線を組むと次のようになる。DH大谷やCダルトン・ラッシングなどは決まり、他は負担や年齢などを考慮した上で配置。UTL選手を余ったポジションに充当した。
やはり大谷、ウィル・スミス、ベッツの高齢化が気になる。全員大きな成績低下は起こらないと仮定しても、他で攻撃力を補わない限り現在のような圧倒的な戦力を維持するのは難しいだろう。アンディ・パヘス、ラッシングの貢献が不可欠になりそうだ。
守備ポジション面ではユーティリティーのトミー・エドマン、キム・ヘソンのおかげで多少の融通は効く。ベッツ、キャッチャーから移動したスミスの内野、パヘスの外野、大谷の指名打者だけ空けておけば大丈夫だ。
逆に言えば内野、外野1,2人ずつ、しかも上位打線を担えるような人材が必要だ。プロスペクト、育成、隠れ才能の発見などあらゆる面で価値を創出し、出来るだけコストをかけず効率的にメジャーロースターを強化していくことが重要となるだろう。
ドジャースがもつプロスペクト
幸いなことにドジャースのファームシステムは、ここ数年安定的にプロスペクトを生産し続けている。
2021デッドラインでのシャーザー&ターナートレードで上位2人をワシントン・ナショナルズに放出したのをはじめ、毎年のように補強でプロスペクトを放出しているが、今年も米公式サイト『MLB.com』TOP100に6人を輩出している。
しかもこれはシーズン前上位にいた佐々木朗希やドルトン・ラッシングを除いた後だ。
前述したように必要なのは内外野1,2人ずつだ。となるとTOP100に外野手4人、内野手1人がいる現状は極めて良い状態だと言える。特にトップ2人の外野手はスーパースターになる可能性のある逸材だ。
傘下1位、全体21位のホスエ・デパウラは20歳ながら並外れたヒットツールが評価されている。アストロズのスラッガーであるヨルダン・アルバレスと比較する声が上がっており、このまま成長を続ければ最低でも30ホームランを打てる選手になるとの予想だ。
傘下2位、全体30位のザイル・ホープはマイケル・ブッシュ放出で獲得してきたドジャースの錬金術トレードの賜物だ。昨年はシングルAでプレーし怪我を抱えた中54試合で19ホームランを打つなどパワーが特徴だ。
メジャーレベルでは30ホームランに達すると予想されている。この2人に加えエドゥアルド・クインテロ、マイク・シロタも最近評価を急上昇させているプロスペクトで、今後TOP50に入る可能性もある。
TOP100に入る野手5人のうち2人でも大当たり、あるいは適正にトレードし、スーパースターを戦力に加えることができれば、大谷らが高齢化した後も攻撃力を維持していくことができるはずだ。
“高コスト体質化“が懸念…?
最後に、ちょっとした不安点について触れておく。
2015年のアンドリュー・フリードマン氏就任以降のドジャースはクリス・テイラー、マックス・マンシー、ジャスティン・ターナーなど他のチームが放出した選手を複数回のオールスター選手に改造。
さらにはエヴァン・フィリップス、アレックス・ベシア、ブルスダー・グラテロルなど強力なブルペンを安く揃えることでコストを圧縮してきた。
マンシーを例に挙げると、2022-2025期間で13.5fWARを稼いだ。FA市場でこの価値を生みだす選手を獲得しようとすると1億ドルから1億5000万ドルくらいかかるが、同期間でドジャースがマンシーに払った給料は6000万ドル。市場調達の約半分のコストで選手を使用できたということになる。
しかし、この2,3年のドジャースは改造による選手発掘を引き当てられていない。結果的に野手ではテオスカーとの再契約や投手ではスコット、イエーツなどを市場価格と同じかそれ以上のコストで調達することを余儀なくされている。
大谷人気による収入増があるとはいえ、最初の高齢化を考えるとこのあたりを改善しておくことは必要だろう。
幸いブルペンでは全体162位指名のベン・カスパリウス、342位指名のジャスティン・ロブレスキー、ドラフト外FA選手のジャック・ドライアーの戦力化に成功。
ウィル・クライン、アレクシス・ディアス、トレード放出後呼び戻したニック・ナストリーニなど若く保有期間の長い改造候補も多く在籍している。
アレックス・ベシアやブルスダー・グラテロルなどのリリーバーの年俸が上がりFAが近づく中で、これは良いサインだ。この流れを野手にも持っていきプロスペクトと共に安く未来戦力の足しにしたいところだ。
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