ドジャースの正捕手は“希少な存在”に…?メジャーリーグにおける“キャッチャーの変化”を徹底解析!【コラム】
2025/06/20
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6月18日(日本時間19日)のパドレス戦で勝負を決める代打本塁打を放ったロサンゼルス・ドジャースのウィル・スミス。攻守で欠かせない存在になっているが、現代のメジャーリーグにおいて捕手にかかる負担は決して少なくない。その中で好成績を収めるのは簡単ではないだろう。今回は、メジャーで変化する捕手の起用法に着目した。(文:Eli)
両リーグのスター捕手
2024年シーズン、ALとNLで1人ずつ大活躍中のキャッチャーが存在する。
ア・リーグで最も注目されているのは、シアトル・マリナーズのカル・ローリーだ。6月18日時点で71試合に出場し、wRC+は181。
これはMLB全体でもアーロン・ジャッジに次ぐ2位の水準だ。さらに27本塁打を記録しており、残り試合数から計算すれば、シーズン60本塁打ペースである。
ナ・リーグではロサンゼルス・ドジャースのウィル・スミスが打撃面で大活躍中だ。58試合出場でwRC+166、打率.330と、首位打者争いのトップであるフレディ・フリーマン(.333)に迫る。
スミスの特徴はクラッチヒッターとしての勝負強さで、米分析サイト『Fangraphs』による勝率加算(WPA)はMLB全体7位の2.33を記録している。
こうしたスターの存在とは裏腹に、「打てるキャッチャー」は極めて希少だ。例えば、2024年までにwRC+が120を超える外野手は34人いるが、キャッチャーではわずか10人にとどまっている。
その理由の一つは、キャッチャーの負担の多さにある。一般的な野手が試合中に覚えておくべき情報は、相手投手のデータや守備シフトなど。
しかしキャッチャーはそれに加えて、自軍の全投手の特徴、相手打者の攻め方傾向なども把握しておく必要がある。1試合で5人以上の投手を起用するのが常態化した現代MLBでは、覚えるべき情報量は膨大だ。例えば5人の投手×相手スタメン9人で45通りになる。
さらに、身体的な負担も過酷だ。しゃがんだ姿勢を1時間以上維持するだけでも体力を消耗するが、ファウルボールの直撃など、ケガのリスクも高い。1試合で数回打球が当たることもある。
また、ホームでのクロスプレーでは、走者との激しい接触が避けられず、長期離脱につながる大怪我の危険もはらんでいる。
こうした負担から、キャッチャーは年齢によるパフォーマンス低下が最も激しいポジションとも言われる。30代以降に他のポジションへ転向する例も少なくない。
フィラデルフィア・フィリーズのJ.T.リアルミュートはその好例だ。31歳の2022年にはwRC+129、盗塁も21とキャッチャー離れした活躍を見せたが、2年後の2024年には故障の影響もあり、wRC+109、盗塁数はわずか2に減少している。
また、2010年代を代表するキャッチャーであるバスター・ポージー(元ジャイアンツ)も、1シーズンに20試合ほど1塁手として出場し、20試合以上を休養にあてるなど、慎重な起用法でキャリアを支えたとされる。
キャッチャーの打撃指標に変化…?
近年、プレーオフにおけるキャッチャーの打撃パフォーマンスが低下している傾向もある。wRC+の3年移動平均で見ても、2000〜2010年代前半は他ポジションと遜色ない成績だったが、2017年以降はwRC+60〜70と極端に低迷している。
その影響か、キャッチャーのポストシーズンMVPはほとんど見られない。ワールドシリーズMVPとしては、2015年のサルバドール・ペレス(ロイヤルズ)が唯一の例。
リーグチャンピオンシップシリーズ(LCS)まで含めても、2002年のベニート・サンティアゴ(ジャイアンツ)、2003年のイヴァン・ロドリゲス(マーリンズ)の2例しか確認できない。
対照的に、守備負担が次に大きいとされるショートでは、近年だけでもコーリー・シーガーやジェレミー・ペーニャなど複数のMVP受賞例がある。
捕手にも“分業制”の流れが…?
こうした背景から、出場試合数を絞りつつキャッチャーの負担を分散する流れが加速している。例えば100試合以上に出場したキャッチャーは、2014年には20人いたが、2024年には16人まで減少している。
特に顕著なのが、ドジャースの起用方針だ。正捕手スミスは、最低でも週に2試合は休養を取るよう調整されており、その背景にはシーズン後半に成績が低下する傾向がある。
2023、2024年ともに、15試合平均のwRC+を見ると、シーズンが進むにつれて明らかな下降傾向がみられる。その対応策としてトッププロスペクトのドルトン・ラッシングを昨季のデッドラインでトレードせず、スミスのバックアップとしての育成を続けている。
ラッシングが捕手として成功するようにプレータイムをマイナー時代の半分に削ってでもメジャーレベルで経験を積ませる方針を採った。
他球団では、アトランタ・ブレーブスがショーン・マーフィとドレイク・ボールドウィンの2捕手体制を敷いているが、これもマーフィの故障歴を踏まえたリスク管理の一環と考えられる。
2025年、はたしてキャッチャーがポストシーズンMVPを受賞する姿を見ることができるのか。ワールドシリーズMVPは2015年のサルバドール・ペレス以来10年ぶり、LCSMVPとなれば2003年以来、実に20年以上ぶりの快挙となる。
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