ドジャース所属のナショナル・リーグ西地区、“三つ巴“の大混戦に…?西地区の戦力、今後の展望を徹底予想!【コラム】
2025/06/13 NEW
Getty Images

メジャーリーグ 最新情報
昨季ワールドシリーズを制覇し、今季はリーグ独走と予想する声も多かったロサンゼルス・ドジャース。しかし、昨季に引き続き故障者が続出し、現時点でナショナル・リーグ西地区首位には立っているものの、「独走状態」とは言えない状況だ。そこで今回は、西地区の現状戦力、今後の展望を分析した。(文:Eli)
ロサンゼルス・ドジャース
ワールドシリーズ優勝を最優先事項に置き構築されたロサンゼルス・ドジャースのロースター。レギュラーシーズン中はある程度の故障離脱を容認し、プレーオフでの投手出力を主眼に置いた構成となっている。
ここまではある意味”計画通り”と言って良い。投手陣にMLB最多14人の故障を抱えながらも、MVP3人を抱える打線の破壊力とリリーフ陣のやりくりによって補完し、NL西地区首位に立っている。以前のような同地区チームに20ゲーム差をつけるような野球はできていない。
しかし打線の勢いはすぐには落ちそうもなく、今後故障者側で目立った問題が起こらないとすれば、グラスノーやスネル、投手大谷の復帰まで耐え忍べば状況は好転するはずだ。若手も豊富であり、7月末のトレードデッドラインでは文字通り何でもできるだろう。
課題としてはこれ以上の故障者は容認できないという点だ。特に前述したエース候補3人が1カ月単位の後退を余儀なくされた場合、プレーオフでの戦いは厳しいものとなるだろう。
サンディエゴ・パドレス
昨季ドジャースをNLDSで2勝1敗まで追い詰めたサンディエゴ・パドレス。結局打線の急停止により3年ぶりとなるLCS出場とはならなかったわけだが、MLB屈指の完成度を誇ったロースターは今季も8割方残っており、王者ドジャースへの脅威であることは確かだ。
ここまでのチームはピヴェッタ、シース、キングが引っ張るローテとアダム、アレス、エストラーダが引っ張るブルペンが支えている。ここまでMLBトップのセーブ数24は接戦が多いことを物語っている。
その一方で、打線が破壊力に欠けている。コンテンダーチームにはドジャースのMVP3人、2024年ニューヨーク・ヤンキースのジャッジ、ソトコンビのようにwRC+140以上を張れるスーパースターがいるケースが多い。
パドレスもマチャド、タティス、メリルのように候補はいるのだが、今季はマチャドの151を除いて全員が120-130あたりで推移している。
さらに下位打線とベンチに目を向けると平均を下回る打者がほとんどと悲惨な状況だ。結果的にチームwRC+は98と平均以下だ。
故障者も徐々に出て来ており、特にマイケル・キングが肩の炎症で離脱、ダルビッシュ有のリハビリ登板が5月14日以降停止しているのは気がかりだ。
前オーナー時代に長期契約を続々契約し、それらの選手の高齢化の波が来ている。ファームシステムも充実しているとは言えず、今季・来季が勝負期となりそうなだけに、トレード巧者で知られるA.Jプレラー氏が今後どのように動くかにも注目だ。
サンフランシスコ・ジャイアンツ
2021年にドジャースと壮絶な地区優勝争いを繰り広げながら107勝して以降、低迷しているサンフランシスコ・ジャイアンツ。今季開幕前はプレーオフ出場確率29.0%とされていたが、ここまで善戦を見せている。
チームの原動力となっているのが先発投手陣で、イニングイーターからイマイチ抜け出せなかったウェブに制圧力がつき、サイヤング賞投手バーランダーとレイが復活、メジャー2年目のループが一皮むけるなど、全体的に予想よりも一歩、二歩とステップアップに成功した印象だ。
ブルペンもドバル、ロドリゲス、ロジャースをコアに平均以上の活躍を見せている。問題は攻撃力だ。長年の課題とされてきたスーパースターの獲得は行われず。
リー、チャップマン、アダメスと中堅スターの積み上げで打線を形成している。この3人+若手のラモスらからMVP候補が出てくると状況も好転するかもしれない。
ファームシステムはパドレスより枯渇していて、打線をブーストするデッドライン補強ができるかは怪しい。
アリゾナ・ダイアモンドバックス
「急失速」と言う言葉が最も合うのがアリゾナ・ダイアモンドバックスではないか。2023年にドジャースをNLDSで破った勢いそのままにワールドシリーズ進出。
その後もガレン、ケリー率いる先発とキャロル、マルテ率いる打線を原動力に競争力を維持し、昨季はプレーオフ進出こそ逃したもののNLワイルドカード3位タイにつけた。今季も開幕前プレーオフ進出確率59.2%と同地区パドレスと並んだドジャースへの脅威とされていた。
しかし、シーズンが始まると肝心の先発陣がパッとしない。エースのガレン、若手のファート、ベテランのロドリゲスが揃って防御率5点台以上。オフの目玉として獲得した大エース、コービン・バーンズは防御率2.66でローテを回していたが、トミージョン手術を受けることになり来季後半以降までの離脱が決定してしまった。
リリーフ陣ではトップ2を張るジャスティン・マルティネス、A.J. パクが離脱。その穴を埋める選手が軒並みマイナスを叩き出している。
唯一の希望は打線で、コアとなるキャロル、マルテを筆頭に若手のペルドモ、中堅のスミスが好成績を残しており、打線全体ではMLB4位となるwRC+115を残している。
今後の焦点はやはり不振となっている先発投手陣で、各々が実績通りの活躍を見せられるかどうかに注目だ。ガレン、ケリー、ファートのトップ3が全員防御率3点台後半~4点台に戻すだけでも状況は大きく好転するはずだ。デッドラインでの買い手になるだけの成績まで戻せるか。
コロラド・ロッキーズ
NL西地区で一人蚊帳の外になっているのがコロラド・ロッキーズだ。同地区4チームが開幕前プレーオフ進出確率で最低25%を出している中で、このチームだけ0%となっている。
ここまで12勝55敗。同地区首位のドジャースには21.5ゲーム差、MLB全体では勝率ワースト2位のホワイトソックスに差をつけられ最下位だ。
このままのペースではシーズン30勝程度しかできないことになる。米分析サイト『Fangraphs』の試算ではシーズン合計51勝111敗で終わると予測されている。5月11日には2017年から指揮したバド・ブラック監督を解任したが、状況が好転する様子はない。
このような悲惨な状況になったのは、ひとえにフロントの編成失敗だろう。そもそもロッキーズは本拠地クアーズフィールドの特殊性から変則的な編成を求められる。
クアーズフィールドはMLB断トツトップの高度1609mに位置し、気圧の関係からボールが良く飛ぶことで知られている。『Statcast Park Factor』によると平均より12%打高とされている。
故に打者には天国、投手には地獄のような環境だ。特に投手はボールが良く飛ぶことに加え、低気圧による空気抵抗の減少から回転による変化を得られない。
このような環境をチーム編成上そもそも活かすことができるのか、というのは議論の対象だが、ロッキーズはそのスタートにも立てていない印象だ。
近年では2022年に7年1億8200万ドルの契約を結んだクリス・ブライアントが不良債権化、その前には球団のスターとして8年契約を結んだノーラン・アレナドとチームの方針をめぐって揉め、カージナルスに引き取ってもらった過去がある。
オーナーも補強には消極的な部類に入る。これではドジャースをはじめとする同地区チームに食い物にされる状況は今後数年続きそうだ。
【関連記事】
ドジャース、高額年俸ランキング2025
「大谷との会談は時間の無駄だった」。ドジャース左腕が不快感を表明。早くも出てきた辛口報道
日本人メジャーリーガーの歴代最高年俸ランキング
【了】