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ドジャース、佐々木朗希は新人王争いに再び加われる…?両リーグの新人王レースを徹底解析!【コラム】

2025/05/30

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Getty Images



(左から)佐々木朗希、ジェイコブ・ウィルソン

メジャーリーグ 最新情報

 開幕前は新人王筆頭候補ともされていたロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希。メジャー初勝利を記録したものの、現在は故障者リスト入りとなっている。新人王に向けての道のりは険しくなってきているが、決して可能性が失われた訳ではない。そこで今回は、メジャーリーグの両リーグにおける新人王争いについてフォーカスしたい。(文:Eli)

 
 ここまでの新人王争いは混迷を極めている。米スポーツギャンブル事業大手『Bet MGM』におけるシーズン前新人王オッズで名前が出ていた選手は軒並み失速し、レースから脱落している。
 
 チーム事情からそもそも出場機会を得られていない選手もいるが、単純な成績悪化や故障によりチャンスがあったにも関わらず脱落した選手も多い。
 
 ポール・スキーンズ、ジャクソン・メリルが両方MVP投票を得るほど活躍した昨年のナショナルリーグ新人王争いとは大きく異なる状況となっている。
メジャーリーグ新人王争い
 

 

アメリカンリーグの新人王争いの行方は…?

アメリカンリーグ新人王争い
 
 新人王有力選手の中で唯一残っていると言って良いのがオークランド・アスレチックスのジェイコブ・ウィルソンだ。デビューは昨季だが出場数が少なかったため、今季も新人王資格を有している。
 
 ウィルソンはルイス・アラエズを彷彿とさせるコンタクトスキルを持ち、とにかくボールをインプレーに持ち込みメジャー4位の打率.342、2位のK%5.2を叩き出している。
 
 ルーキーの中で投球コミュニティーを最も騒がせたと言って良いのがシカゴ・ホワイトソックスのシェーン・スミスだ。オフにルール5ドラフトでミルウォーキー・ブルワーズからホワイトソックスに移籍すると、ここまで10先発53.1回を投げ防御率2点台を維持している。
 
 フォーシームは平均94.9マイル(約152キロ)と平均程度だが、最も目を引くのがチェンジアップ(キックチェンジ)だ。スミスのチェンジアップは90マイル(約144キロ)に迫る平均球速にも関わらず大きく落ちていく。空振り率はメジャー6位の37.5%となっている。
 
 また、マイケル・キング2号と呼ばれるのがニューヨーク・ヤンキースのウィル・ウォーレンだ。ゲリット・コール、ルイス・ヒル、マーカス・ストローマンと故障者が続出しているヤンキース先発陣の穴を見事埋めている。典型的なシンカー/スイーパーコンボの横変化を活かして勝負する投手だ。

 

ナショナルリーグの新人王争いの行方は…?

ナショナルリーグ新人王争い
 ナショナルリーグの新人王争いは候補のほとんどがレギュラー選手で無いという状況だ。WARトップ1.5を記録しているドレイク・ボールドウィンはショーン・マーフィーのバックアップ、3、4位のベン・カスパリウス、ジャック・ドライアーはリリーフ投手。
 
 5位リアム・ヒックスはニック・フォーテスと出場を分かち合っている。6位スミス・ショーバーは一度マイナー降格を経て、現在はローテに戻っている状態だ。
 
 1位となっているアトランタ・ブレーブスのボールドウィンは、前述の通りマーフィーと2捕手体制を形成している。昨季からトラビス・ダ―ノウがFAで移籍、更にマーフィーが左胸郭骨折で開幕間に合わなかったことでチャンスを得ると、打撃で結果を残しており、wRC+167はMLB全キャッチャー中4位の数字だ。
 
 マーフィーが6年7300万ドルの契約をブレーブスと結んでいるため、フルタイムキャッチャーにはならないが、このまま打撃で結果を残せば100試合程度は出場できるだろう。
 
 2位のチャド・パトリックは候補の中で唯一レギュラー選手と言える存在だ。シーズン初登板以外は全て先発で起用され、ローテ4番手あたりをシーズン通して守っている。
 
 防御率3.23、xERA3.93と成績、内容共に素晴らしいとは言い難いが、ネスタ―・コルテス、ブランドン・ウッドラフなど5人の先発が故障者リスト入りしているブルワーズでチームが求める役割を見事果たしている。
 
 カスパリウス、ドライアーもワールドシリーズの疲労による故障が続出しているドジャースで複数イニング要員として頑張っている。カスパリウスは99マイル(約159キロ)のフォーシームと3000rpmを超え大きく曲がるスライダーを武器にルーキートップのK%28.4を記録。
 
 ドライアーはクレイトン・カーショーを彷彿とさせるフォーシーム/スライダー/カーブの球種構成で強打を抑え、xERA2.12はメジャー6位となっている。

 

“ダークホース”となる新人王候補は…?

ドジャースの佐々木朗希
 ここからは今後伸びそうな候補を紹介する。
 
 アメリカンリーグからはテキサス・レンジャースのジャック・ライターだ。デビューは昨季だが今季も新人王資格を持っている。開幕ローテ入りを果たすも右中指水ぶくれのため一時故障者リスト入り。
 
 その後4月末にローテ復帰している。平均97.4マイル(約156キロ)のフォーシームに87.7マイル(約140キロ)のスライダーと球威で勝負する投手で、ここまで7先発36.0イニングを投げ、防御率4.25、WAR0.4となっている。
 
 課題はキャリアを通して抱える制球難で、四球が多く長打を浴びることも多い。一方で既に5球種を投げるなど完成度が高い投手でもあり、制球力を平均程度~若干下くらいまで戻せれば安定的な投球を見せてくれそうではある。
 
 立ち位置としては同じくルーキーであるクマ―・ロッカーとの争いになるが、ロッカーは肩の故障で離脱しており当分はメジャーレベルで機会が与えられるだろう。
 
 ナショナルリーグからはシーズン前誰もが同意する新人王候補だった佐々木朗希を選出したい。平均100マイル(約161キロ)の速球と大きく落ちるスプリットという前評判からあらゆる媒体で高評価を受けていた佐々木だが、球速低下やフォーシームの問題が露呈。
 
 34.1イニングで防御率4.72とローテを回すだけの選手になってしまった。さらに肩の故障で4/16に故障者リスト入りしている。
 
 ここまで散々なスタートとなっている佐々木だがポジティブな要素も多い。一つは球速低下の原因がある程度明らかになったことだ。東京シリーズで98-100マイル(約158~161キロ)を計測していた佐々木だが、制球とのバランスを取り96-97マイル(約154~156キロ)に下げたとされていた。
 
 しかし離脱直前2,3登板では93-94(約150~151キロ)マイルまで低下。これが真の球速ではないのかという説まで浮上していた。しかし故障が発覚したことで、球速低下は故障が原因で実力的には96-97マイル(約154~156キロ)は出せるのだろうと推測できる。
 
 もう一つは故障による調整期間の存在だ。佐々木はフォーシームの質が悪く、他球種を足す必要が指摘されていた。しかし中5,6日をキープする先発ローテでは簡単に新球種の練習はできない。
 
 ところが故障となり比較的気長に練習できる時間ができたことで、この点が解決すると期待される。既にシンカーを取り入れている姿が目撃されている。
 
 2023WBCのように100マイル(約161キロ)の剛球で打者を制圧する姿は見られないかもしれない。しかし球種を増やしたうえで96-97マイル(約154~156キロ)まで球速を戻した姿に上手く適応することができれば、突出した候補がいないNL新人王争いにおいてダークホース的な存在になるだろう。

 

 
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