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菊池の好守はなぜ生まれた? 侍Jのピンチ救った配球の妙と戦略的ポジショニング

WBC初戦。キューバに快勝した日本だが、試合を通じて圧倒していたわけではない。特に初回のピンチは冷や汗もので、ここで決壊していては結果はどうなっていたか分からない。試合のターニングポイントとも言うべきファインプレーはなぜ生まれたのか? 偶然ではない侍ジャパンの高度な戦略に迫る。

2017/03/08

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配球の妙と守備力。総合力で防いだピンチ

「(セペダには)あまり神経質にならずにゴロを打たせてゲッツーを捕ろうと。何とかゴロを打たせればと思っていました。1、2、3球目としっかりインコースをつけていたので、相手はひっかけるだろうな。1、2塁間に飛ぶ確率は高かったと思います」
 
 球がやや甘く入った分、強めの打球にはなったが、菊池の守備力なら捕れる範囲だ。ポジショニングとバッテリーの配球が重なってのプレーだったといえる。
 
「菊のところに飛べば安心感があります」
 
 小林が振り返っているように、日本の内野守備陣でもっとも信頼がおけるのは菊池であることは間違いない。それほど信頼がおけるからこそ、小久保裕紀監督は2年連続トリプルスリーの山田哲人をDHにしてまで、菊池を二塁手起用しているのだ。菊池ならアウトを確実に増やしてくれるという安心感が日本のストロングポイントなのだ。
 
 この試合、日本がとった27個のアウトのうち、菊池が7個をさばいている。これは、この日の最多アウト数である。
 
 日本で一番守備の上手い場所に打たせることで勝利をつかんだ試合――。
 
 筆者のその仮説を「菊だけじゃない。併殺を取れる内野陣が揃っている」と小林には否定されたが、小久保監督は「初回のプレーが大きかった」と菊池を絶賛している。2つの発言からは野球というスポーツの面白みを感じることができる。
 
 菊池のプレーがあったから打線が爆発したように、意図した配球があるから好プレーが生まれる。野球とはそういうスポーツなのである。
 
 試合中、控え捕手の炭谷銀仁朗と大野奨太が小林に声を掛ける場面があった。「ストライクゾーンの確認とあとは色々」と炭谷は煙にまいたが、小林は「(今日の)石川さんはいつもよりスライダーの球速が速いという話と、デスパイネの特徴ですね。中身は秘密です」とはにかんだ。
 
 侍ジャパンのチーム力を感じた勝利だった。

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