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セイバーメトリクスの視点で見るNPB歴代最強打者ランキング ~21位-30位~

2021/03/05

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DELTA・道作



阿部慎之助、福留孝介と近年の選手がベスト30入り

 27位には2019年に現役を引退した阿部慎之助がランクイン。打撃三冠においては目立たないながら、wRAAの場合その真価が見てとれる。最高長打率が3回、最高OPSが2回はともに捕手として唯一の記録である。キャリア全体で、特に長打力に優れた才能を発揮したが、低反発球が採用された2011-2012年には出塁力でも素晴らしい成績を残した。これを見るに飛ばないボールの方を得意としていた可能性がある。現代野球で捕手にこのような強打者を配備することは難しい。捕手のポジションで他チームに大きく差をつけることのできた読売は、2010年前後に黄金期を築くことに成功している。

 28位の大杉勝男は東映やヤクルトで、一貫してパワー系のスラッガーとして活躍した選手だ。1974年まで10年を過ごした東映・日拓・日本ハム在籍時がwRAAで見た場合の全盛期であるが、移籍後にヤクルトで初めて優勝を経験。wRAAのリーグ首位はなかったが、最高長打率を1回、本塁打王・打点王を2回記録した。ちなみに飯島滋弥コーチから「月に向かって打て」という指導を受け開眼した逸話が知られている。近年アメリカでは、データ解析の結果、一定の打球速度・打球角度を満たした打球「バレル」を狙う打撃が推奨されている。飯島の言葉はバレルを狙う現代的な打撃の先駆けのように思える。
 
 29位の小鶴誠は1940-50年代にかけて活躍した161打点のシーズン打点記録保持者である。小鶴については、17位で紹介した藤村富美男と同様に、1949-1950年の飛びぬけた数字が光る。この2年間のwRAAで藤村は133.9、小鶴は135.0をマーク。ラビットボール使用の2年間とあってそれまでとはステージが変わるほどの打棒を見せた。1950年のwRAA80.9は当時の歴代最高記録であり、王によって1964年に更新されるまで残った。飛ぶボールを得意としたようで、翌年以降は成績が低下するが、その後も目立たないながらwRAA20点レベルのプラスを記録している。
 
 30位は2021年現在、現役の福留孝介である。最盛期になると思われた5年間をMLBで過ごしたため日本国内での数字は30位に留まっている。ただ渡米前の数字は極めて高く、規定打席未到達のシーズンはあったものの、6年連続でwOBAは4割を超えていた。日本に残りこの頃の打撃を継続していた場合は通算で500点を大きく超えていたことになる。11位-20位を紹介した前回の記事でも記載したが、NPBを取り巻く周辺環境の変化により、通算成績で上位にランクインする選手は少なくなった。そのタイプの一人がこの福留である。現代の選手とMLB行きが選択肢として存在していなかった時代の選手では、通算成績の意味合いが変わってきている。
 
(※2)UZR(Ultimate Zone Rating):同じイニングを守った平均的な同ポジション選手と比較して失点をどれだけ防いだかを表す守備指標。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
 
DELTA・道作
 
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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