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セイバーメトリクスの視点で見るNPB歴代最強打者ランキング ~11位-20位~

2021/03/02

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Getty Images, DELTA・道作

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 昨年の5月から「セイバーメトリクスの視点から過去の打撃ベスト10を振り返ろう」の企画では、各年度の打撃10傑を取り上げきた。すでに1936年から2020年まで、日本プロ野球の歴史を貫通させている。ただ企画はこれで終わらない。ここではランキングに使用した指標wRAA(※1)を選手ごとに合算し、日本プロ野球オールタイムの最強打者ランキングベスト50をカウントアップ方式で紹介していく。
 

 
 またランキングはシーズン合算で行っているため、日本で長く現役生活を送った選手が有利となる。現役選手や、キャリアの中でMLB挑戦を試みた選手、外国人選手にとっては不利なランキングだ。そこで短期間に集中した残された実績、全盛期の活躍を評価するため、各選手のキャリアベスト5年、ベスト10年で見た場合のwRAAも併記した。歴史的名選手の最盛期のピークがどれだけ高いものだったのかも、通算ランキングとあわせて楽しんでほしい。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。データ算出は筆者。
 

 

松井、イチローがMLBに移籍しなければどうなっていた?

 11位から20位には、2000-2010年の間に活躍した選手が7人ランクインしている。この年代にはほかにイチロー、福留孝介など、MLB流出のため日本時代の成績が伸びなかった選手もいる。筆者としては、選手の資質的にこの時期がNPB史を飾る黄金期であったと考えている。

 特に松井秀喜は、どの選手でも成績が伸びづらい高卒直後の時期を含む10年間だけで通算15位にランクインしている。MLB流出前は毎年成績を上昇させつづけていた。松井がNPBで選手生活を全うしていた場合、渡米直前の3年のうち最も悪かった2000年の成績を残し続けると仮定しても、34歳の時点で王貞治に次ぐ歴代2位までwRAAが伸びていたことになる。MLBへの移籍がなかった場合、wRAA歴代ベスト3は王、松井、イチローの並びになっていた可能性が高い。今後も並外れた打者が生まれた場合、年齢などの問題がない限りMLB行きが想定されるので、10位以内に新たなメンバーが加わることは以前よりも難しいことになるだろう。
 
 ほかにもベスト10には魅力的な打者がランクインしている。デビューが遅かったり、稼働年数が短いなどの理由で、10位以内にはランクインしていないものの、それぞれが上位10人に匹敵するポテンシャルを有している。特に小笠原道大はベスト10シーズンの通算では歴代9位、アレックス・カブレラはベスト10シーズンの通算で歴代10位の数字を記録した。松井はベスト10シーズンの通算で歴代8位、ベスト5年の数字では4位にランクインする。
 
 11位の榎本喜八、17位の藤村富美男、20位の豊田泰光はいずれもキャリアにおいて、現代よりリーグのチーム数が多い時代を過ごした。チーム数の多さはリーグレベルの低下を意味するため、wRAAの数字もやや過大評価になっている可能性がある。特に藤村は一挙にチーム数が2倍になる選手不足とラビットボールという非常に数字の伸びやすい時期を経験している。ただ一方で出征と戦争によるシーズン中止で5年間を棒に振っており、9位にランクインした川上哲治同様、評価の難しい選手である。
 

ローズ、カブレラは歴代最強外国人選手

 12位の小笠原道大は1999年から2010年まで12年連続で規定打席をクリア。2000年から11年連続でOPS(出塁率+長打率).900を超えた。金本知憲は1995年から2009年まで15年連続で規定に乗り、wRAAシーズンベスト10入りを12回記録。1492試合連続フル出場の記録も保持している。両者ともに単年に高いスコアをマークするというよりは、高いレベルを長く継続した点が特徴である。なお、小笠原の規定打席到達、OPS.900以上が途絶えたのは2011年。この年は低反発球が導入された年にあたる。環境の変化により晩年のキャリアが割りを食った感がある。

 外国人選手枠を経験した中で通算のwRAAが最も高いのはタフィ・ローズ。14位にランクインしている。外国人選手には珍しい10年を超えるキャリアがものをいったかたちだ。同様にカブレラも18位にランクイン。通算ではローズが上位となったが、140試合換算のwRAAやベスト5シーズン、ベスト10シーズンの数字では、すべてカブレラが上回っている。
 
 日本プロ野球には、現在まで数多くの優秀な外国人枠選手が在籍してきた。しかし爆発的な成績と活躍期間の長さを両立させた選手は少ない。一時的に強力な打撃を披露しても諸般の事情から10年未満で帰国する選手がほとんどで、通算成績の上位に顔を出す選手は稀有である。近年、日本と他国の間で相互理解が進み社会生活のギャップが薄れてきたこと、枠の拡大などの環境変化により長く滞在する外国人選手も増えてきており、歴史的に重要な位置を占めることも定着しつつある。
 

19位の和田一浩は異例の遅咲き選手

 またスポーツ医学の向上により、プロ野球で稼働可能な年齢の幅は広がってきている。特に深刻な故障を抱えない限り、以前では考えられないほど能力の維持は可能となった。近年では40歳を過ぎての活躍についても違和感は薄れてきている。

 松中信彦も20代後半から本格的にキャリア全盛を迎えた1人である。三冠王獲得を含むシーズン通しての出場を7年間継続。2006年に右臀部(でんぶ)の膿瘍(のうよう)というキャリアを脅かす疾病を患い、本塁打が半減するものの、この年は首位打者と最高出塁率を確保した。その後はさすがに精彩を欠いたが、それでも2009年までレギュラーとしてwRAAでプラス、つまり平均以上の打者として活躍を続けている。落合博満同様に20代後半からの本格稼働でも大打者となり得る時代になったことを示した例だ。もしも大きな疾病に罹患していなければ、悠々と通算ベスト10入りは果たしていたと考えられる。
 
 私が最も驚くべきキャリアと考えているのが和田一浩である。最初の規定打席到達が30歳のシーズン。これは一般的には下り坂に差しかかろうかという年代である。それより前の5シーズンはすべて合計しても557打席に過ぎない。この状況からベスト20にランクインしていることは、周辺環境の変化によるコンディション維持力の向上も一つの要因ではないかと感じさせる。
 
 20位の豊田泰光は、清原和博に破られる前の高卒1年目の最多本塁打記録を持っていた選手である。その清原と豊田で打撃のスタイルが似通っていたのは面白い。いずれも能力のわりに打撃三冠とは縁が薄く、打席での忍耐力に優れ、高い出塁能力によって得点を生産した。清原は最多四球を4回、最高出塁率が2回。豊田は最多四球を3回、最高出塁率を2回記録している。
 
DELTA・道作
 
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 
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