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セイバーメトリクスの視点で見るNPB歴代最強打者ランキング ~11位-20位~

2021/03/02

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Getty Images, DELTA・道作



19位の和田一浩は異例の遅咲き選手

 またスポーツ医学の向上により、プロ野球で稼働可能な年齢の幅は広がってきている。特に深刻な故障を抱えない限り、以前では考えられないほど能力の維持は可能となった。近年では40歳を過ぎての活躍についても違和感は薄れてきている。

 松中信彦も20代後半から本格的にキャリア全盛を迎えた1人である。三冠王獲得を含むシーズン通しての出場を7年間継続。2006年に右臀部(でんぶ)の膿瘍(のうよう)というキャリアを脅かす疾病を患い、本塁打が半減するものの、この年は首位打者と最高出塁率を確保した。その後はさすがに精彩を欠いたが、それでも2009年までレギュラーとしてwRAAでプラス、つまり平均以上の打者として活躍を続けている。落合博満同様に20代後半からの本格稼働でも大打者となり得る時代になったことを示した例だ。もしも大きな疾病に罹患していなければ、悠々と通算ベスト10入りは果たしていたと考えられる。
 
 私が最も驚くべきキャリアと考えているのが和田一浩である。最初の規定打席到達が30歳のシーズン。これは一般的には下り坂に差しかかろうかという年代である。それより前の5シーズンはすべて合計しても557打席に過ぎない。この状況からベスト20にランクインしていることは、周辺環境の変化によるコンディション維持力の向上も一つの要因ではないかと感じさせる。
 
 20位の豊田泰光は、清原和博に破られる前の高卒1年目の最多本塁打記録を持っていた選手である。その清原と豊田で打撃のスタイルが似通っていたのは面白い。いずれも能力のわりに打撃三冠とは縁が薄く、打席での忍耐力に優れ、高い出塁能力によって得点を生産した。清原は最多四球を4回、最高出塁率が2回。豊田は最多四球を3回、最高出塁率を2回記録している。
 
DELTA・道作
 
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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