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ブライアント、クロマティの両外国人選手がセパの話題を独占 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1989年編~

2020/09/19

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1989年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
読売   130 .656 520 358  162
広島   130 .589 510 431  79
中日   130 .535 538 524  14
ヤクルト 130 .433 507 559  -52
阪神   130 .419 497 580  -83
横浜大洋 130 .370 474 594  -120
 

 
 この年も落合博満(中日)がリーグトップのwRAA49.8をマーク。表彰タイトルは116打点で獲得した打点王だけであったが、セイバーメトリクス系の数字はトップをキープしている。このシーズンはベスト10に欠場の嵩んだ選手が多かった。そんな中、落合が全試合出場したことも数字の積み上げに寄与している。

 両リーグとも優勝チームの外国人選手がシーズン中の話題を独占した年である。セ・リーグの話題を独占したのがクロマティ(読売)であった。この年、開幕から打撃好調だったクロマティは96試合目に規定打席に到達した上で4割をキープするという快挙を達成。その後は数字を落とし最終的には打率.378となったが、首位打者のほか、.449で最高出塁率を獲得している。wRAAで見た場合、41.9で落合に次ぐ2位だった。
 
 3位は阪神のセシル・フィルダーである。ある試合で、フィルダーは自分の三振に怒りバットを叩きつけたが、そのリバウンドが自分の指を直撃して負傷。106試合の出場で帰国となった。ただこの出場数で本塁打トップのパリッシュに4本差の38本塁打。そのまま出場しつづけていれば、本塁打王が有望な状態であったので、負傷は余計に残念に感じる。長打率.628は落合を抑えてリーグ1位であった。
 
 フィルダーは帰国後、アメリカン・リーグで2年連続本塁打王、3年連続打点王を獲得する活躍を見せた。さらに息子のプリンスまでがMLBのスターとなっている。実はフィルダーは、阪神入団前にすでにMLBでも強打者となりうる予兆は見せていた。所属していたのが一塁・DHの強力なブルージェイズでなければ出場機会に恵まれ、日本に来ることはなかったかもしれない。
 
 チームに目を移すと、各球団の得点力に大きな差はない。ベスト10に3人を送り込んだトップの中日で538点、最少の横浜大洋で474点と差はわずかであった。得点力にはほとんど差がなく、結局は投手力で優勝の行方が決まっている。読売の投手力は歴史的なもので、358失点は1971年大洋以来の少なさであった。
 
 ベスト10圏外での注目選手は西田真二(広島)。プロ入り以後代打を専業としていたが、この年は規定打席の半分程度の出場機会を得て、前兆なく爆発的な打棒を示した。広島外野陣にやや選手が過剰であったこともあるが、完全なプラトーン要員だったわけでもなく、中途半端な起用になっている。一般的にはこのように突然好成績を残した打者は、翌年は成績を下げることがほとんどである。しかし、西田の場合この翌年の1990年も同じような起用で、さらに良い成績を残している。非常に奇妙な例である。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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