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辻内崇伸、ドラフト1位の肖像――「戦力外通告にほっとした。野球人生に悔いなし」【連載第5回】

かつて「ドラフト1位」でプロに入団した選手1人の野球人生をクローズアップする。華やかな世界として脚光を浴びる一方で、現役生活では「ドラフト1位」という肩書に苦悩し、厳しさも味わった。その選手にとって、果たしてプロ野球という世界はどのようなものだったのだろうか。

2016/11/01

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田崎健太

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痛みとの闘い

 翌朝、肘は痛みがひどく、全く動かなくなっていた。そこで、キャンプは切り上げて、東京に戻ることになった。幾つか病院を回ったが、痛みの原因は不明。ようやく館林にある病院で症状が判明した。
 
「靱帯がない、と言われたんです。靱帯が切れていると。もう尋常じゃないぐらい痛かったので、軽症ではないなと思っていました」
 
 この年の4月26日に辻内は靱帯再建手術を受けている。いわゆるトミージョン手術である。
 
「手術を受けた後って、自分の腕じゃないみたいな感覚なんです。ボールを投げていいよって渡されて、ふわっと投げてみた。そうしたら、投げ終わった後、肘の辺りがビーンっと振動しているような嫌な感覚があるんです。その後、リハビリしても、その痛みはとれない」
 
 それからは痛みとの闘いだった。
 
「手術の後、リハビリをして投げたら、151キロ出たんです。スピードが落ちなかった、良かった、と思っていたら、次の日、痛みで投げられない。それが3週間ぐらい続く。リハビリをして良くなったら投げるとまた痛くなる。その繰り返しでした」
 
 可視化できない痛みは、他人から理解されにくい。ドラフト1位という肩書きを背負った辻内は、周囲の冷たい視線にさらされた。
 
「いつまでリハビリやっとんや、という感じでしたね」
 
 彼の心の支えとなったのは、高校時代の映像だった。
 
「またこう戻りたいという思いと、このフォームで投げたら痛いよなという思いがありました。自分の中でこう投げれば痛くないというのをひたすら探していたんです。しかし、スピードは出ない。自分の思ったところに投げられない。速いボールを投げたいのに投げられないもどかしさ」

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