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好調西武を支える“陽キャ” 甲斐野央の投球には「人情味が漂う」。さらなる躍進のキーマンは“絶対的なリリーフ”へ

2025/06/16 NEW

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産経新聞社



西武・甲斐野央

プロ野球 最新情報

 移籍2年目の埼玉西武ライオンズ・甲斐野央がセットアッパーとして躍動している。6月15日には、15試合連続ホールドポイントの球団新記録を達成。度重なる怪我や移籍を乗り越え、新天地で輝きを取り戻した右腕。現在、オールスターファン投票1位になっているその人気の秘密と、快投を続ける現在の姿に迫る。(文・羽中田)

 
 6月15日(日)、8回表のマウンドに上がると、先頭打者に四球を与えピンチを招いたが、落ち着いて後続を断ち切った。これで16試合連続無失点という快投。さらに、15試合連続ホールドポイントもマークし、球団新記録を達成した。
 

 
 前日の14日(土)には、7回表、1死一、二塁の場面でマウンドへ。1点リードの状況を守り抜き、登板を終えると捕手の牧野翔矢と笑顔で喜びを分かち合った。その表情は、どこかホッとした様子だった。
 
 ホームのベルーナドーム、そして準本拠地の大宮では、ここまで11試合に登板し、防御率0.00(6月15日時点)と無類の安定感を誇る。しかも、この両日ともにスタンドのチケットは完売。レフトスタンドを中心とした西武ファンの声援が、彼の投球を支えていたことは間違いない。
 
 6月13日(木)時点のマイナビオールスターゲーム2025ファン投票中間発表では、パ・リーグ中継ぎ投手部門で堂々の1位。その結果は、今の甲斐野の充実ぶりを象徴している。
 

すっかりお馴染みとなった背番号「34」

 
 移籍2年目となる今季、甲斐野はセットアッパーとして16ホールドポイント(2勝1敗14ホールド)という好成績を記録。背番号「34」のユニホームを着たファンの姿も、球場ではすっかりお馴染みとなった。
 
 東洋大姫路高校から東洋大学へと進み、2018年のドラフトで福岡ソフトバンクホークスから1位指名を受けてプロ入り。開幕一軍をつかみ取り、開幕戦でプロ初登板・初勝利を挙げた相手は、奇しくも今まさに所属する埼玉西武ライオンズだった。
 
 デビューイヤーの2019年は、65試合に登板して28ホールドポイント(2勝5敗26ホールド)を記録。力強いストレートと切れ味鋭いフォークを武器に、相手打線をねじ伏せ、ソフトバンクの中継ぎ陣の柱として堂々の働きを見せた。新人とは思えないマウンド度胸に、首脳陣もファンも舌を巻いた。
 
 シーズン終了後には侍ジャパンに選ばれ、プレミア12で世界一の瞬間を味わった。大学時代にも日の丸を背負った経験を持ち、プロの世界でも順調にステップアップ。同大会では5試合に登板して防御率0.00、さらに2勝を挙げ、名実ともに全国区の存在となった。
 

すべてが順風満帆だったわけではなかった

 
 しかし、すべてが順風満帆だったわけではない。右肘の違和感やコンディション不良に悩まされ、思うような投球ができず、登板数も年々減っていった。
 
 転機は2023年オフ。FAでソフトバンクを離れた山川穂高の人的補償として、西武へ移籍することが決まった。かつてのチームメートやファンに惜しまれながらの移籍。福岡では地元TV局でレギュラーコーナーを持つほどの人気を誇っていた。
 
 新天地・西武での挑戦は、甲斐野を再び奮い立たせた。入団会見では、ファンからのメッセージ色紙を受け取るなど、加入当初から期待の高さがうかがえた。
 
 迎えた2024年シーズン。意気込んで臨んだものの、春先から右肘の違和感が再発。登板はわずか19試合にとどまり、キャリア最少に終わった。
 
 それでも復帰を焦らず、トレーニング方法を一から見直した。身体の使い方、肘のケア、栄養管理まで、すべてをゼロから整え直し、今季の快投につながっている。その視線の先には、「ライオンズで勝利の方程式を担う」自分の姿が、はっきりと見えているはずだ。
 
 同じ中継ぎ右腕の水上由伸とともに「チーム陽キャ」グッズを作るなど、明るいキャラクターも甲斐野の魅力のひとつ。投手・野手の垣根を越えて後輩に声をかけ、時には選手とコーチの間さえもつなぐムードメーカーとしても頼もしい。ベルーナドームでは、ブルペンへ向かう際に必ずボールボーイとグータッチを交わすなど、人柄がにじんでいる。
 

大きな武器となっている”明るさ”と”気配り”

 
 2024年のライオンズサンクスフェスタでは「最優秀おもてなし賞」を受賞。明るさと気配りは、彼の大きな武器だ。
 
 4月27日、ベルーナドームでのオリックス戦では1イニングを無失点で抑え、移籍後初勝利を挙げた。
 
 5月7日には、同球場で移籍後初のお立ち台に立つ。相手は、かつての古巣・ソフトバンク。9球で3者凡退という完璧な投球を披露し、スタンドを沸かせた。この日はさらに、第2子を授かったという喜ばしいニュースも飛び出し、球場は大歓声に包まれた。サンクスフェスタの時よりも、さらに明るい表情を浮かべたその姿に、プロ野球選手としての充実が感じられた。
 
 気がつけばプロ7年目。 怪我、リハビリ、移籍、新たな家族……さまざまな経験を背負いながら、甲斐野はブルペンで肩を作っている。
 
 プロ入りから一貫して中継ぎ登板に生きてきた。その投球には、どこか人情味が漂い、努力と素直さがにじみ出ている。街でのサインや写真撮影、握手にも真心が込められており、多くのファンの心をつかんでいる。
 
 西武のブルペンには、今季も明るい笑顔と力強い右腕がいる。変わらぬ立ち居振る舞いと、来るべき登板に向けた準備は続いている。

 
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【了】



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