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阪神・村上頌樹を支えるストレート。コントロールで重要なのは前足の踏み込み 【工藤公康の眼】

今年3月に『プロフェッショナル投手育成メソッド 一流選手へ導く“投球メカニズムとトレーニング”』を出版した工藤公康氏。交流戦が終わり熱い夏を迎える中、編集部が気になる選手や話題について、工藤氏に現場で選手やコーチに伝えてきた指導メソッドの視点も織り交ぜながら語ってもらった。

2023/06/29

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産経新聞社



ストレートの状態から交代期を見極める

 村上投手も開幕からローテーションで回るのは初めての経験です。疲労が溜まることで、下半身の筋力が落ちてくることも考えられます。それによって4月にはできていた動作が、今後うまくできなくなってくる場合もあります。それだけ、先発として1年間投げ続けるのは難しいことだと言えるのです。
 
 1試合通した中でも、球数が増えていけば、何らかの変化が表れてきます。村上投手の場合は、ストレートのキレがひとつのバロメーターになるでしょう。空振りを奪えていたストレートが、フェアゾーンにいい当たりが飛ぶようになってきたら、交代期と考えることもできます。
 

 
 7回まで完全試合ペースで投げていた4月12日の巨人戦で、岡田彰布監督が8回から継投に入ったことが話題を呼びました。おそらくは、ストレートの状態を見て、交代を判断したのだと推測します。
 
 監督を経験した者としては、信頼のあるリリーフ陣にあとを託したくなる気持ちは十分にわかります。
 
 一方で、ピッチャーの心理を考えると、「打たれるまで投げさせてあげたい」という気持ちも同時にあります。このあたりはゲーム状況やチーム事情、野手出身監督とピッチャー出身監督の考え方など、様々な要素があっての判断になると思います。
 

書籍情報

『プロフェッショナル投手育成メソッド 一流選手へ導く“投球メカニズムとトレーニング”』
 
18歳以上を対象に、実際のプロの現場でも活用された門外不出、名将の投手指導マニュアルが待望の書籍化。プロの世界で重要視される「フォームの再現性」+「コントロール」の二つの技術向上に必要な理論から具体的なトレーニング方法をわかりやすく解説。日々の過ごし方から投球術まで詳しくノウハウが凝縮された1冊だ。
 

目次

第1章 投手に必要な3つの柱
第2章 ピッチングにおける運動連鎖
第3章 技術習得のためのトレーニングピラミッド
第4章 投手が走る意味はどこにあるのか?
第5章 オフシーズンとシーズン中のコンディショニング
第6章 試合で勝つための投球術
第7章 医科学をどのように生かすか
 
工藤公康
1963年愛知県生まれ。1982年名古屋電気高校(現・愛工大名電高校)を卒業後、西武ライオンズに入団。以降、福岡ダイエーホークス、読売ジャイアンツ、横浜ベイスターズなどに在籍し、現役中に14度のリーグ優勝、11度の日本一に輝く。通算224勝。正力松太郎賞を歴代最多に並ぶ5回、2016年には野球殿堂入り。2015年から福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。2021年退任までの7年間に5度の日本シリーズを制覇。2020年監督在任中ながら筑波大学大学院人間総合科学研究科体育学専攻を修了。体育学修士取得。2022年4月より同大学院博士課程に進学、スポーツ医学博士取得に向け研究や検診活動を行っていく。
 
 

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