大谷翔平選手をはじめとした日本人メジャーリーガーを中心にメジャーリーグ・日本プロ野球はもちろん、社会人・大学・高校野球まで幅広いカテゴリーの情報を、多角的な視点で発信する野球専門メディアです。世界的に注目されている情報を数多く発信しています。ベースボールチャンネル



まさかの失敗も即挽回。ルーキー北山亘基は冷静沈着、不屈のチャレンジャー!【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#172】

東京シリーズの初戦は終盤に追いつかれ、10回表に守護神の北山亘基がまさかの牽制ミスでピンチを広げると、結果的にこのプレーをきっかけに敗戦へつながった。しかし3戦目、すぐに初戦の失敗を取り戻す登板チャンスが訪れた。

2022/05/01

text By

photo

産経新聞社



3戦目、再びマウンドへ

 が、9回裏、走者を置いて清宮三振で延長戦に突入する。10回表、マウンドには回またぎの北山が上がった。通常、抑え投手は1イニング限定なものだが、新庄ファイターズは当たり前のように北山を回またぎで使う。ちょっと大丈夫かなぁと思ったのだ。加藤も「8回も行くのか」と思ってて、ホームランを喫した。こういう嫌な予感は当たるものだ。
 
 案の定、四球&ヒットで無死1、2塁になって、打者福田周平。福田は最初からバントの構えだ。ファーストの清宮が猛チャージをかける。と、北山は無人の1塁へ牽制球を投じてしまった…。これは表現としては「1塁悪送球」だろう。が、きちんとコントロールされており「悪送球」のニュアンスではない。人のいないところに投げてしまったのだ。オリックスは労せずして無死走者2、3塁。
 
 そりゃ延長でこんなミスが出たら負ける。北山降板の後、堀瑞輝が火消しにかかったが、吉田正尚にタイムリーを打たれて2対3の敗戦だ。僕は北山が心配になった。あの無人牽制球、清宮のチャージの方がサイン見落としだった可能性もあるが、グラウンドの雰囲気から見て北山のミスだろうと思った。冷静沈着なキャラで「教授」が愛称の北山にしては、珍しい失態だった。こういうことがきっかけでイップスになったり、自分が出せなくなった選手もいる。苦い経験だ。北山はこれを呑み込めるだろうか。
 
 僕は投手と野手の違いを想った。野手は加点法だ。やればやっただけ加点される。10回のうち3回成功すれば一流打者だ。失敗を怖れる必要がない。失敗は成功の母。新庄流のチャレンジングな気風に合っている。一方、投手は減点法だ。しっかり仕事を重ねても、最後にミスすればすべてを失う。10回のうち9回成功しても、1度失敗したら印象は0になる。もしかして北山に無理をさせただろうか。「開幕投手」で「回またぎオッケーの万能リリーフ」ってムシがいいのか。

 が、28日の第3戦、北山は見事戻ってきた。9回を三者凡退に仕留める好投だった。東京ドーム3連戦は今川優馬の「執念」大爆発で語られることが多いかと思う。今川のチャレンジする姿は新庄ファイターズの精神そのものだ。失敗してもめげずに頑張れば2打席連続ホームランをかっ飛ばす日がやって来る。実績なんてなくていい。必要なのは闘争心。
 
 で、僕は北山にも同じものを見た。投手もおんなじだなぁ。今川と北山ではキャラが違う。北山はあんなに気持ちを前に出すタイプではない。だけど、不屈のチャレンジャーだ。勇気をもって一昨日失態を演じたマウンドに再び立ち、勇気をもってマイナスイメージを消してみせた。北山、ナイスファイト。僕らは君のことも加点法で見ることにする!

1 2