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菊池雄星、またも“悪癖”で最悪5失点。余裕なくアドバンテージ台無し MLB屈指の好投手との対戦は痛み分け【雄星リポート第18戦】

 シアトル・マリナーズの菊池雄星投手が29日(日本時間30日)、敵地ミニッツメイド・パークでのヒューストン・アストロズ戦に先発登板した。メジャーリーグ屈指の好投手ジャスティン・バーランダー投手との投げ合いとなった試合は、ともに5回で降板する苦しいピッチング。菊池は5回6安打5失点(自責点3)バーランダーは5回5安打4失点で降板し、両者に勝ち負けはつかず痛み分けとなった。

2019/06/30

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“たった1イニング” 初回完璧だっただけに

“たった1イニング”の投球に言及する理由は、それだけ1回の立ち上がりが抜群に良かったからだ。
 
 1回裏、初対戦となる強力アストロズ打線に対して、菊池は全くひるむ様子はなかった。
 
 先頭のスプリンガーには、アウトコースのストレートでカウント0-2と追い込んでから、インコースのストレートで空振り三振。2番のアルトゥーべには、同じくアウトコースの93.9マイル(約151キロ)のストレートでファールを奪ってからのチェンジアップで二ゴロ。3番ブレグマンは、ストレートとチェンジアップのコンビネーションから二飛に抑えたのだった。
 
 アルトゥーべやブレグマンといった強打者に対しても、臆面もなくチェンジアップを投げ込んでいく。その組み立てには、菊池が新たな球種を見つけたことに対する自信をうかがわせるものだった。
 
 それが2回表にティム・ベッカム内野手の2ラン本塁打で先制すると、一変してしまったのである。
 
 当然、連続四球の後チリーノスを三振、レディックの二ゴロが併殺になっていればという悔いはあるだろう。しかし、これまでも見せてきたように、2点を先制しながら一変した投手の後ろ姿に守備陣がリズムを崩すことだってあるのだ。
 
 そうして招いた悪循環から抜け出せずに、マリズニックに逆転打を浴びたのである。
 
 3回以降、菊池は立て直した。ピンチを背負う場面が多かったが、それでも、チェンジアップを組み立てに加えることでストレート、スライダーが生き、カーブも加えて内と外に投げ分けることで得点を与えなかった。
 
 もったいないピッチングだった。
「あの1イニングだけ」という後悔は野球でよくあることだ。だが、その反省の要素に、菊池がメジャーデビュー以降、抱えてきた「得点直後」に一変する悪癖があることを決して忘れてはいけない。MLB屈指の好投手との投げ合いだっただけに、悔いが残る。
 
 投げているボール、配球自体は日々、改善傾向にある。
 これを続けていけば、防御率は下がっていくだろうという予感はする。しかし、試合の流れをどう勝利につなげていくかを変えていかない限りは、成績は上昇しないだろう。この悪癖は3勝目を挙げた11戦目のリポートにも課題として書いた。その後、不調が訪れて、後回しになっていたが、菊池がメジャーで生きていくためには身につけなければならない。

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