ドジャースは大型補強に動く…!?メジャーリーグ両リーグのトレードデッドラインを展望【コラム】
2025/07/10
産経新聞社

メジャーリーグ 最新情報
7月31日(日本時間8月1日)にトレード期限を迎える今季のメジャーリーグ。毎年この時期になると各球団の動きが活発となるが、今シーズンも大物選手が絡む大型トレードが生まれるだろうか。そこで今回は、両リーグのトレードデッドラインの状況について纏めた。(文:Eli)
トレードデッドラインの分類
MLBのトレードデッドラインが近づく中、各球団の動き方は大きく4つに分類される。①「売り手」、②「マイルドな売り手」、③「マイルドな買い手」、④「買い手」だ。
まず①の「売り手」は、今季のプレーオフ進出が絶望的な球団。保有する価値の高い選手を積極的に放出し、将来を見据えた補強にシフトする。
②「マイルドな売り手」と③「マイルドな買い手」は、いずれもプレーオフ出場圏からはやや距離がある球団。目先の勝負を完全に捨てずに、来季以降も見据えたバランス重視の動きをとる。
④「買い手」はプレーオフ進出が有望なチームで、9月以降の戦いやポストシーズンを見据えた補強に積極的に動く立場だ。
トリッキーなのは7月前半時点で②、③に該当するチームだろう。プレーオフ出場圏内から2.0~4.0ゲーム差あたりのチームがこれになるが、今年の勝負を追求するか、長期を見て今年は退くかの選択を迫られる。
選択を誤れば、マイナーデプスを消費した上でのプレーオフ出場失敗や、売り手市場での利益確保失敗などのリスクがある。
加えて、ここ数年のトレード市場には明確な変化がある。その一つが「売り手の減少」だ。2022年にプレーオフ出場枠が拡大され、7月時点でシーズンを完全に諦める球団が減少。結果として、明確に「売り」に回る球団が少なくなっている。
また、2022年のフィリーズ、2023年のレンジャースとダイヤモンドバックスがいずれもワイルドカードからワールドシリーズに進出したことで、「とにかくプレーオフに滑り込めば何が起きるかわからない」と考える球団が増えている。
これにより、2021年のマックス・シャーザー&トレイ・ターナーのような大型トレードは年々成立が難しくなっている。
その一方で、年俸調停が数年残る若手や今季デビューしたばかりの選手を含む“クリエイティブなトレード”も増加傾向にある。今や、今年FAとなる選手だけが放出候補とは限らない。
むしろ、制限された市場の中でいかに将来性や柔軟性を活かすか──フロントオフィスの力量が問われる局面と言えるだろう。
アメリカンリーグの状況は…?
現在、地区優勝圏内に位置するタイガース、アストロズ、ヤンキースの3チームは、プレーオフ進出をほぼ確実視してよいだろう。
地区優勝の行方はともかく、いずれもワイルドカード争いに対して5ゲーム以上のアドバンテージがあり、ロースターの完成度も高い。米分析サイト『Fangraphs』の進出確率予測でも、いずれも95%以上と評価されている。したがって、この3球団は「買い手」として積極的な補強に動くことがほぼ確実だ。
同じア・リーグ東地区でヤンキースに迫るレイズも、現在の順位や進出確率から見て「買い手」に分類される。ただし、独自の運営方針を持ち、長期的視野に基づくチーム作りを重視するレイズが、従来型の「買い」に出るかは不透明だ。
とはいえ、今季の勝負を見据え、短期的にロースターを強化する動きはとるとみられる。当落線上に位置するマリナーズとブルージェイズも、現状の戦いぶりを維持すれば「買い手」に転じる可能性が高い。
両チームともにプレーオフ出場を現実的に狙える位置におり、シーズン後半へ向けて確実にその座を掴むためにも、戦力補強を行う動機は十分にある。
複雑なのは、プレーオフ圏外ながらまだチャンスが残されている球団だ。現在、3ゲーム差以内に5球団がひしめく大混戦の中、最も難しい判断を迫られているのがエンゼルスだろう。
先発防御率4.22(リーグ21位)、ブルペン防御率5.17(27位)、チームwRC+96(21位)と、投打ともに数字は厳しい状況にある。
さらに、監督不在やスーパースターのマイク・トラウトの度重なる故障といった不安要素も多い。それでも、プレーオフまではわずか2.5ゲーム差に迫っており、同地区ライバルのマリナーズを射程圏内に捉えている。戦力状況と現在の立ち位置の狭間で、どの道を選ぶかに注目が集まる。
対照的に既にプレーオフ絶望となっているオリオールズ、アスレチックス、ホワイトソックスはFAが近い選手の価値を回収すべく全力で売りに入る。既に菅野智之(BAL)やルイス・セベリーノ(ATH)、ルイス・ロバートJr.(CHW)などの名前が取り沙汰されている。
ナショナルリーグの状況は…?
ナ・リーグでは、ドジャース、フィリーズ、カブスの3球団が地区優勝圏内に位置しており、いずれも「買い手」として積極的な動きを見せると予想される。
特に、同地区2位とのゲーム差がわずか2.0ゲームに過ぎないフィリーズとカブスは、ポストシーズン争いを優位に進めるため、複数の補強に踏み切る可能性が高い。
ワイルドカード圏内にはさらに3球団が位置しており、これに加えて、2.0ゲーム差以内に迫っているパドレスとジャイアンツも含め、いずれもプレーオフ進出確率が30〜80%の間を行き来している。ライバル球団との僅差の争いを制すべく、これらの球団もロースターの強化に乗り出すと見られる。
一方で、やや異質な立ち位置にいるのが、ここ10年でNL東地区を5度制覇したアトランタ・ブレーブスだ。今季は開幕7連敗という波乱のスタートを切り、その後も勝率5割を行ったり来たりの不安定な戦いぶりが続いている。
現時点での成績は38勝45敗、ワイルドカード争いからは8.0ゲーム差、プレーオフ進出確率も25.1%にとどまっている。この状況は、先に紹介したエンゼルスとは対照的だ。つまり「実力は高いが数字上の可能性は低い」といった、逆の構図である。
野手陣にはロナルド・アクーニャ、マット・オルソン、マルセル・オズーナといった主力が並ぶ強力打線を擁しているものの、投手陣が苦しい。開幕ローテーションのうち3人が離脱し、ブルペンでは守護神ライセル・イグレシアスが不振。
中継ぎ陣にも支配力に欠ける印象がある。それでも編成トップのアレックス・アンソポロスGMは、クリス・セール放出の噂を明確に否定するなど、「戦う姿勢」を崩していない。今後、どのような補強に出るか、注目が集まる。
下位層では、マーリンズを筆頭に少なくとも4球団が「売り手」に回る見込みだ。中でも市場最大の注目株となりそうなのが、マーリンズが保有する元サイ・ヤング賞投手、サンディ・アルカンタラだ。
彼にはまだ2年半の契約が残っており、放出されるとすれば長期コントロール可能な一流先発投手として争奪戦は必至となる。
今季序盤は制球難に苦しみ、防御率5点台と不振だったが、直近では改善の兆しも見えている。果たして、マーリンズがこのタイミングで放出に踏み切るか──価値の底を打っている中での判断には慎重を要するが、市場に出れば間違いなく先発市場の目玉となる存在だ。
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