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一塁手が勝敗を決める──山梨学院・吉田監督が語る“ファースト守備”の重要性【インタビュー】

2025/08/12 NEW

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yoshidakoji

3年ぶり11度目の夏の甲子園に挑む山梨学院!
吉田洸二監督は2009年春に長崎県立清峰、そして2023年春には山梨学院を率いて、センバツを2度制覇。3月に発売された『高校野球界の監督がここまで明かす! 守備技術の極意』(大利実・著)より、吉田監督が求める「ファーストの守備力」についての頁を一部抜粋で公開する。(文・大利実)

 

 

「持論ですが、背番号順にボールをたくさん触ると思っています」

 
 吉田洸二監督は2009年春に長崎県立清峰、そして2023年春には山梨学院を率いて、センバツを2度制覇。吉田健人部長は監督の長男にあたり、学生コーチを4年務めたあと、2020年からは監督・部長としてコンビを組む。
 全体的なマネジメントは監督が務め、技術的な指導は部長が受け持つのが山梨学院のスタイルで、親子ならではの信頼感でチームを作り上げている。
 本章では、監督が求める「ファーストの守備力」を先に紹介したあと、部長による技術解説に入っていきたい。
 
── 取材のテーマは「ファーストの守備力」です。山梨学院は代々、守備に優れた選手をファーストに起用している印象があります。
 
吉田 それはもう、これまでの経験で学んだことです。長崎で監督をしていたとき、幾度となく、ファーストの守備で負けた苦い思い出があります。
ランナー一塁からのファーストゴロで、無理に二塁に投げて、一塁ランナーにぶつけてしまったり、内野手の低投をフォローできずにピンチを広げてしまったり……。
そうした経験があったからこそ、今はファーストを大事にしていて、部長がよく鍛えてくれています。
 

 
── 山梨学院のファーストは、センバツを制したときの高橋選手や、2019年世代の相澤利俊選手ら、グラブさばきがうまいですよね。
 
吉田 感覚としては、一番うまい内野手をショートに置いて、次に守れる選手をファーストに置く。
それぐらい、重要なポジションであるのは間違いありません。持論ですが、背番号順にボールをたくさん触ると思っています。
ピッチャーが1番で、キャッチャーが2番で、ファーストが3番。
1試合通じて、ほかの内野手に打球が飛ばないことがあっても、ファーストが1回もボールに触れないことはないはずです。
 
── 当たり前ですが、ファーストの捕球でアウトが成立する。
 
吉田 内野手の送球が乱れたとき、特に低いバウンドを投げたときに、ファーストがどれだけフォローできるか。
この技術が勝敗を分ける、と言っても過言ではありません。プロ野球と違って、内野手の送球が安定しているわけではないですから。
乱れたときに、ファーストがフォローできれば、ミスがミスではなくなるんです。
2アウトから、内野手の低投をファーストが捕球できれば0点で終わるところを、後ろに逸らしてしまったためにピンチが広がり、そのあとにタイムリーを打たれて、2点、3点取られるのが高校野球です。
 
── 山梨学院では、ファーストがフェイスガードを着けた状態で、ショートバウンドやハーフバウンドの送球を受ける練習をやっていますね。
 
吉田 部長がほぼ毎日打っています。ああいう地道な練習の積み重ねが、大事なんです。
 
── あの練習を本当に大事だと思ってやっている高校は、意外に少ないですよね。
 
吉田 あれは、ノッカーの技術も問われますからね。
 
── なるほど。ほかに、ファーストの守備で気になるプレーはありますか。
 
吉田 3-6-3ですね。ファーストが投げたあとに、自らベースに戻って、ダブルプレーを取れるか。
ここで、ピッチャーのベースカバーを待ってしまうと、だいたいセーフ。
これもファーストの技術ですが、ダブルプレーを取れるかどうかはかなり大きなプレーになります。
 
── ポイントはどこにありますか?
 
吉田 ファーストの戻りの速さです。これも、部長が徹底的に鍛えています。
あとは、タイブレークが採用されたことで、無死一、二塁からのファースト前のバント処理がこれまで以上に重要になりました。
サードで刺せるファーストがいれば、かなりの武器になるのは間違いありません。
 
── 個人的に気になるのは、一塁にランナーがいるときのファーストの守備位置です。片足を一塁ベースに着けずに、30センチほど離れたところで構えていますよね。
 
吉田 以前、外部コーチをお願いしていた小倉清一郎さん(元横浜部長)の教えです。
少し離れているだけで、一、二塁間の打球に追いつけることもありますし、ファーストのゴー・バックもやりやすいですね。
 
── 相手も、微妙に離れているのはイヤかもしれません。
 
吉田 イヤだと思いますよ。そういう守り方に慣れていないですから。
ただ、ベースに着いていたほうが、一塁線の打球に対応できるかもしれませんし、一概にうちのやり方が絶対に良いとは言い切れないと思います。
 
── 何を優先するかで変わってきそうですね。
 
吉田 そうだと思います。細かいところは、部長に聞いてみてください。私が知らないところで、かなりのこだわりを持っているはずです。
 
 
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書籍情報


『高校野球界の監督がここまで明かす! 守備技術の極意』
大利実 著 定価:1980円(本体1800円+税)
 
全ポジションの指導を網羅
新基準バット対応マル秘上達メソッド
 
守備を制するものが高校野球を制す――。
2024年春の公式戦から、「新基準バット」が本格的に導入された高校野球。
「新基準バットになったことで、守りの重要性がこれまで以上に高くなっている」
多くの指導者が口にしている言葉だ。
そこで、2018年から続く「技術の極意シリーズ」の第5弾として選んだテーマは、「守備技術」である。

 
【了】



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