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「旬」を逃さずに起用していく──仙台育英・須江航監督が目指す日本一激しいチーム内競争【日本一からの招待】

2025/08/06 NEW

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2023年夏以来、2年ぶりに夏の甲子園出場を決めた仙台育英!
第104回全国高等学校野球選手権大会で、東北勢初の日本一を達成した仙台育英高校。23年夏に慶応(神奈川)と戦って以来2年ぶりに夏の甲子園に出場。2022年12月に発売となった『仙台育英 日本一からの招待』(須江航・著)より、「日本一激しいチーム内競争─評価論」から一部抜粋で公開する。仙台育英の「メンバー争い」に迫る。(文・須江航)

 

 

「旬」を逃さずに起用していく

 
「日本一激しいチーム内競争の先に日本一がある」
 
2018年から変わらずに持ち続けている想いです。
 
 選手たちがなぜ一生懸命に練習するかといえば、試合に出て、活躍して、チームの仲間とともに勝利の喜びを味わいたいからに他なりません。
 どれだけ努力をしていても、試合に出るチャンスがまったくないとわかれば、モチベーションが下がっていくのは当然のことでしょう。
 会社でも学校でも部活動でも、「自分が何かの役に立っている」「組織の成果に貢献できている」と思えるからこそ、前を向いて、頑張れるはずです。
 

 
 私が高校時代に務めていたGMは、かつては、新チーム始動時に2年生からひとりを選ばなければいけない暗黙の了解がありましたが、今は部員自らの立候補制に変えています。誰も手が挙がらなければ、GM不在でも構いません。
 チームのマネジメントという点では、GMがいてくれるほうが助かるのですが、野球部に入ってきた一番の理由は、「選手として、甲子園で活躍したい」であるはずです。
 選手の気持ちを考えると、最後の最後まで試合で活躍するための努力を続けさせたい。
 その機会をできるかぎり作ってあげることが、指導者の責務だと思っています。
 
 私の高校時代を振り返ると、「これ以上、選手を続けていても、1パーセントもチームに貢献できない」という理由から、GMになることを決意しました。
 それぐらい、選手としての力量が劣っていたのです。この決断には、まったく悔いはありません。
 
 今の選手たちには、「メンバー入りの扉は、常に開いている」と1年中、言い続けています。大会が終わるたびにフラットな状態にして、選考レースが始まります。
 
 夏の県大会と甲子園でメンバーを入れ替えることも、毎年のように行っていることです。
 レギュラー格であっても、次の大会でのベンチ入りが完全に約束されているわけではないため、「メンバー争い」という緊張感の中で日々過ごしています。
 
 私の中で、選手ひとりひとりの「〝旬〞を逃したくない」という気持ちがあり、状態が上向きの選手を積極的に使うことが、チームの勝利につながると考えています。
 1年間、ずっと調子が良い選手がいない一方で、ずっと悪い選手もいません。
 必ず、上がり下がりがあり、誰にでも〝旬〞はあります。
 また、選手側にも、「大事な試合に向けて、ピークを持ってきてほしい。今日、この瞬間に力を発揮しなければいけないという日は、社会に出てもあることだから」と伝えています。
 勝負の日に力を出せることも、生存競争を勝ち抜く大事な要素になります。
 
 

書籍情報


『仙台育英 日本一からの招待 幸福度の高いチームづくり』
須江航 著 定価:1870円(本体1700円+税)
 
2023年夏 甲子園準優勝!
 
2022年夏 東北勢初の甲子園優勝!
「青春は密」「人生は敗者復活戦」「教育者はクリエイター」「優しさは想像力」
チーム作りから育成論、指導論、教育論、過去の失敗談まで、監督自らが包み隠さず明かす!
『人と組織を育てる須江流マネジメント術』
 
<有言実行!夢の叶え方>
基準と目標を明確化 努力の方向性を示す
選手の声に耳を傾け、主体性を伸ばす
データ活用で選手の長所・短所を〝見える化”
日本一激しいチーム内競争の先に日本一がある
高校野球が教えてくれる、本当に大切なことを学ぶ

 
【了】



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