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セイバーメトリクスの視点で見るNPB歴代最強打者ランキング ~41位-50位~

2021/03/11

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DELTA・道作

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 昨年の5月から「セイバーメトリクスの視点から過去の打撃ベスト10を振り返ろう」の企画では、各年度の打撃10傑を取り上げきた。すでに1936年から2020年まで、日本プロ野球の歴史を貫通させている。ただ企画はこれで終わらない。ここではランキングに使用した指標wRAA(※1)を選手ごとに合算し、日本プロ野球オールタイムの最強打者ランキングベスト50をカウントアップ方式で紹介していく。
 

 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。データ算出は筆者。
 

 

山田哲人、丸佳浩は現時点で歴史的強打者の一員に

 41位~50位には現役選手や近年の選手が多く並ぶかたちとなった。

 まず41位には現役の山田哲人がランクインしている。レギュラーシーズン出場は2020年終了時点でわずか9年を経過したところ。まだ20代であるため今後もスコアを伸ばすと予想され、引退時にはかなり大きな値になっているだろう。守備的ポジションの二塁手としてこのような成績を残す選手が出現することはまれで、ほぼ二塁手専業の選手としてはすでに史上最大のwRAAを叩き出している。すでにwRAAで2回リーグ首位となっているほか、本塁打・盗塁・出塁率・長打率など数多くの項目でリーグ首位を獲得している。ちなみにwRAAのキャリアベスト5シーズンを合算した場合、267.2となるがこれは2020年現在歴代10位にあたる数字である。
 
 42位にはこちらも現役の丸佳浩。打席での忍耐力を武器に、目立たないながらも多くの得点を生産して一軍でのキャリア11年でランクインした。最多四球は3回記録。特に2018年の130四球は王を除けば史上最多の数字である。その忍耐力ゆえにカウントが深くなり三振もかさむが、これは四球で多くの出塁を得るためのトレードオフといえる。2020年現在打撃三冠の獲得はないが、wRAAのような総合打撃指標で見た場合に真価がわかる打者である。今後の現役生活の長さによっては通算でかなり上位にランクインする可能性もある。
 
 43位は丸と同じく広島でデビューした江藤智。本塁打王を2回獲得したスラッガーである。広島時代は忍耐力にも優れた打者で、打率に似合わぬ高出塁率を記録。1996年には最高出塁率も記録している。読売移籍後は四球獲得のペースが落ちたが、これは三振をよしとしない球団の風土に合わせた可能性もあると考えている。全盛期の1994-1996年には3年連続でOPS(出塁率+長打率)が1.000を超えた。
 

長期間安定の衣笠、波のあるキャリアを送った高橋由伸・バレンティン

 44位には「鉄人」衣笠祥雄がランクイン。こちらは23年間広島一筋でプレーした。決して大柄とは言えない体格ながらパワーヒッターとして活躍。打点王と盗塁王が1度ある。短期間に圧倒的な力を見せるというよりは、長年にわたり水準以上の能力を示すことによりチームに恩恵をもたらした。飛ばないボールにもあまり苦にしなかったようで、投高打低環境にあった1971年にはリーグ2位の打率.285を記録した。ちなみにこれは打率2位としては戦後最も低い数字である。17年間フル出場を達成しており、レギュラー獲得後の20年で欠場はわずか15試合であった。

 45位には2015年に現役を引退した高橋由伸が入った。18年のキャリアは常に負傷との戦いで、特に最後の8シーズンは100試合を超えたのが2年だけ。生涯で130試合以上に出場できたのも4シーズンに留まった。試合に出場しつづけた44位の衣笠とは真逆の現役生活だが、それでもこの位置にランキングされているところに才能を感じさせる。入団後しばらくは四球をあまりとれないタイプの打者であったが、2007年には出塁率.404を記録。弱点をはね返してwRAAでも1位となっている。
 
 46位はシーズン本塁打記録保持者ウラディミール・バレンティン。年度別の記事でも紹介したが、2020年終了時点で獲得した3回の本塁打王は、打率最下位・規定打席不足・史上最多本数と、すべてレアな形容詞がついている。2013年と2014年には圧倒的な打棒を披露したが、キャリアを通して欠場が多く、年度ごとの成績にバラつきが大きい。この結果、ヤクルトで同僚だった山田より1年長い一軍キャリアながら、通算wRAAでは山田に及んでいない。ちなみに直近5年間でマークした盗塁は1個だけだが、5年続けて盗塁死を律儀に1個ずつ記録しているのは面白い。
 

イチローは実質キャリア7年でランクイン。MLBに移籍しなければ歴代2位?

 47位にはついにイチローが登場。日本でのキャリアはわずか9年。しかも最初の2年はwRAAでマイナスを記録しているため、実質わずか7シーズンでこのランキングに入ってきた。

 イチローがもしMLBに移籍せず、NPBに残っていた場合を仮定してみよう。MLBで規定打席に達した年数と同じだけNPBでキャリアを送り、NPB時代の7年間の平均のwRAAをその間マークしつづけたと仮定すると、通算wRAAは張本勲を上回り、王貞治に次ぐ2位となる。ちなみにイチローのNPB終盤は欠場がかさんだ結果、wRAAが伸び悩んでいる。よってこの予想はかなり控えめなものだと考えられる。
 
 マーリンズでプレーした2015年には打率.229と低調に終わり、MLBでの3000本安打に届かず引退することも頭をよぎった。しかし、翌年に盛り返して大台をクリアしている。ちなみに現在米野球殿堂入り投票は、薬物関連の問題で有力選手が殿堂入りとならず、候補者の大渋滞が起こっている。イチローが米野球殿堂入りの資格を得るのは2025年。このタイミングは有力選手が資格を失う時期にあたる。不利な条件が消えた上に、3000本安打の大台をクリアしていることは、初年度殿堂入りのために非常に重要な条件ではないかと考える。
 
 48位には西武黄金時代を支えた秋山幸二が入った。スピードとパワーを兼ね備えた基礎的な運動能力の高さはレギュラー初年度あたりから広く知られていた。レギュラー確保当初の2年ほどは主に三塁手としての出場だったが、1970年代ごろから三塁守備は以前ほど守備的に重要なポジションとみなされなくなっていた。こうした背景を受けてか秋山もより重要と認知されていた中堅へコンバート。以後は知られたとおり歴史的名手として鳴らした。最高長打率を1度記録するなど長打力に大きな強みがあったが、一貫して出塁率に難があり、総合指標wRAAで見た場合、意外に数字は伸びていない。本塁打王と盗塁王の獲得経験がある珍しい選手で、これは2リーグ時代では山田哲人が現れるまで唯一の記録であった。
 
 49位は現役の青木宣親。2020年終了時点で4000打数以上での最高打率.325をマークしている。首位打者3回、最高出塁率2回と優秀なリードオフタイプだが、長打率5割超えのシーズンも4回記録している。MLBでのキャリア6年間をはさんでいるためNPBでのプレーはまだ11年だが、それでもランクインしてくるのはこの長打力も一因である。年間wRAA2位が2回、3位が1回ある。
 
 50位は小久保裕紀がランクイン。一貫して出塁能力よりも長打力に秀でた成績を残し続けたキャリアであった。本塁打王1回、打点王1回、長打率1位が2回。wRAAリーグ首位こそなかったが、長期間に渉り良好な数値を積み上げ、大卒ながら400本塁打・2000本安打のマイルストーンをクリアしている。レギュラーとなった当初は二塁手で、ゴールデングラブ賞にも選ばれており、1995年にはこの賞と本塁打王を同時獲得した二塁手という史上唯一の記録を打ち立てている。
 
 以上でトップから50人の選手を紹介してきたが、以下にも長い歴史を現すように魅力的な選手が続く。
 
 一例として60-62位の3人がアレックス・ラミレス、筒香嘉智、ランディ・バースの並びになっていることに注目したい。ラミレスは2000年代に打撃タイトルを次々と獲得し、外国人選手として初の2000本安打を放った打者である。日本でのキャリアは13年と外国人選手としては異例の長さ。にもかかわらず60位とそれほどランキングは高くなく、一般的なイメージからするとギャップがある読者もおられるのではないだろうか。
 
 一方、筒香、バースはNPBでのキャリアがそれぞれわずか10年、6年と短い。にもかかわらずラミレスとほぼ同等のスコアを記録している。筒香についてはこれからピークを迎えようかというタイミングでNPBから移籍。さらにほとんど実績のない若手時代も含まれての10年である。ラミレスと筒香・バースには出塁能力に大きな差があり、それがキャリアの長さの差を埋める主要因となっている。セイバーメトリクスの視点で見ることで一般的な評価とのギャップを感じやすい並びではないだろうか。
 
 もちろん2021年以後もプロ野球は続くわけで、このランキングも毎年変わっていく。20年後に私が生きていればどのようなものに変わっているのか、興味はつきないところである。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 
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