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規定未満の二刀流・大谷翔平がパ・リーグを支配 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2016年編~

2021/01/05

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DELTA・道作

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 本企画はNPB過去年度の打撃ベスト10を眺め、往事の野球を今の視点から振り返り楽しんでもらおうというものだ。ただベスト10は従来の打率ではなく、セイバーメトリクスにおける総合打撃指標wRAA(※1)を採用する。これはリーグ平均レベルの打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標だ。この視点で振り返ることで、実は過小評価されていた打者がわかるということもあるかもしれない。
 

 

2016年のパ・リーグ

チーム    試合 勝率 得点 失点 得失点
日本ハム   143 .621 619 467  152
ソフトバンク 143 .606 637 479  158
ロッテ    143 .514 583 582  1
西武     143 .457 619 618  1
楽天     143 .443 544 654  -110
オリックス  143 .407 499 635  -136
 

 
 この年も柳田悠岐(ソフトバンク)がwRAA47.9で首位になった。前年の大活躍を見た後ではこの年の柳田はスランプに感じただろうし、打撃3部門の数字では浅村栄斗(西武)の方が良く見える。しかしこの年の柳田は出塁率、長打率、1打席あたりの得点貢献を表すwOBA(※3)、そしてwRAAと得点生産との関わりが深い指標すべてが1位であった。四球が初のキャリア初の3ケタに達したことや、打席数のわりに二塁打、三塁打が多かったことが、打撃3部門の数字以上に貢献が大きかった主な要因である。特に本塁打20本未満の長打率1位(.523)は1960年の長嶋茂雄(読売)以来56年ぶりのこととなった。またこの年30盗塁はクリアできなかったものの、23盗塁で失敗が2とスピードは健在である。
 
 2位は角中勝也(ロッテ)が打率.339で首位打者を獲得してランクイン。本塁打以外はすべて優秀なスタッツを残している。3位には打撃が復調した浅村。この頃は非常に積極的に打って出るタイプであったためかwRAAの値は安定せず、シーズンごとの好不調の振り幅が大きな打者であった。2012年以降の順位を見ると20位、1位、18位、16位、3位と浮き沈み激しく推移していたが、この後は打撃スタイルに変化が見られ安定に向かっている。4位の糸井嘉男(オリックス)は盗塁王を獲得。偶然であるが53盗塁・17盗塁死まで並びの盗塁王だった金子侑司(西武)と同数であった。
 
 ベスト10圏外の注目選手には日本ハム勢の3人に注目する。11位のブランドン・レアードは前年を上回る打棒を見せ39本塁打で本塁打王を獲得。19位の中田翔はこの年110打点で2014年以来2度目の打点王となった。しかしこの2度ともベスト10から外れているのは面白い。
 
 規定打席不足組では大谷翔平がいよいよ恐るべき打撃力を発揮しはじめた。382打席と規定打席にかなり迫りながら、wOBAは首位の柳田を上回る.427をマーク。長打率も.588とリーグ1位を上回っている。ちなみにこの長打率は規定不足分の64打席をすべて凡打してもなおベスト5に入る値である。打席が多いほど有利になる積み上げ式のwRAAでもチーム最大、リーグ2位の35.1を記録。過去にはリーグ首位がこれより小さい数字だったシーズンもある。こうした大谷率いる打線の活躍もあった結果、日本ハムは持ち前の投手力とあわせて強力な戦力を発揮し、87勝を挙げて優勝している。
 

2016年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
広島   143 .631 684 497  187
読売   143 .507 519 543  -24
DeNA   143 .493 572 588  -16
阪神   143 .457 506 546  -40
ヤクルト 143 .451 594 694  -100
中日   143 .414 500 573  -73
 

 
 筒香嘉智(DeNA)が初の1位を記録した。44本、110打点で本塁打王、打点王を獲得。wOBA.467もリーグ1位であった。wRAA67.5は非常に大きな数字で、得点の単位になっているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利数に換算すると7.2に到達している(※2)。この数字が7を超えることは珍しく、セ・リーグでは21世紀に入って4例目のことである。セ・リーグの日本人選手としては2010年阿部慎之助(読売)以来の44本塁打、2008年村田修一(当時横浜)以来8年ぶりの本塁打王となった。
 
 2位の山田哲人(ヤクルト)は前年に続きトリプルスリーを達成。30盗塁で盗塁王を獲得した。wRAA58.0は筒香に及ばなかったが通常のシーズンであれば首位になるほどの大きな数字である。3-4位の坂本勇人(読売)、鈴木誠也(広島)に関してもwRAAは49.5、49.0と非常に優れた値で、このシーズンは各チームの中心選手が揃って好調だったようだ。なお坂本は打率.344、出塁率.433で首位打者と最高出塁率を獲得。山田、坂本と、過去に見られなかったレベルの打力を持つ二遊間の選手がランキング上位を占めている。
 
 ほかには村田修一(読売)、MVPを獲得した新井貴浩(広島)、福留孝介(阪神)と、7-9位にはベテラン勢がそれぞれの特性を生かしてランクインしている。こういったベテラン選手が多くランキングに食い込むときは、翌年のランク入りメンバーが大きく変わりやすいものである。
 
 ベスト10圏外の注目選手では規定打席に足りなかったブラッド・エルドレッド(広島)を挙げる。来日以来、負傷や不振などで欠場の多い選手である。2018年まで7年間の在籍で規定到達は1度。途中入団の1年目を除いても、6年間の全860試合中512試合出場に留まる。この年も354打席だったが21本塁打を記録。またその豪快に長打を狙うスタイルからすると意外に思える.294の高打率を残して優勝に貢献した。
 
 この年は1991年以来25年ぶりに広島が優勝を遂げた。ランキングに挙がった選手が多いことから想像がつくかもしれないが、この年は広島が684得点と得点力で2位以下に大差をつけリーグを圧倒した。投手陣も好調で497と最少失点を記録した結果、89勝52敗と、相当に強力な戦力を見せつけたシーズンとなった。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
DELTA・道作
 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 
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