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松中信彦が平成唯一の三冠王に セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2004年編~

2020/11/17

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Getty Images, DELTA・道作



2004年のパ・リーグ

チーム   試合 勝率 得点 失点 得失点
西武    133 .561 718 656  62
ダイエー  133 .597 739 651  88
日本ハム  133 .504 731 697  34
ロッテ   133 .500 649 642  7
大阪近鉄  133 .466 630 636  -6
オリックス 133 .374 622 807  -185
 

 
 前年に引き続き、リーグ全体で打撃優位の状況が続いている。この頃、コミッショナー事務局ではこうした環境を調整するための指針としてボールの反発力に注目していた。ただこの数年後、ボールの飛距離には反発力よりも空力が大きく関係するという論文が公開されることになる。この時点ではこうした実験が行われておらず、事務局はこうした打撃優位の環境を早急に解決する手を持ち合わせていなかった。

 この年は松中信彦(ダイエー)が初のランキング1位となった。wRAAだけでなく、1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)など得点生産に関する指標から、打撃三冠まですべての指標でリーグ首位。wRAAは69.0と出色の数値が出ている。特に本拠地の福岡ドームは本塁打が最も出にくいピッチャズパークであっただけに、余計に価値のある活躍であった。
 
 2位城島健司(ダイエー)はリーグ首位の項目こそないものの、いずれの項目でも優秀なスタッツを揃えた。特に長打率の.655は1975年田淵幸一の.657に迫る捕手として歴代2位の数字。捕手としてwRAAリーグ2位も1991-92年の古田敦也(ヤクルト)以来12年ぶりであった。3位はフェルナンド・セギノール(日本ハム)。前回の来日時は不振に陥ったが、このときは別人のような強打を発揮。44本塁打で本塁打王を松中と分け合っている。
 
 打撃優位のリーグ戦で、3チームが700得点を超える打棒を発揮した。松中、城島、井口資仁、フリオ・ズレータとタレントを揃えたダイエー。小笠原道大、セギノールを中心とした日本ハム。和田一浩、ホセ・フェルナンデスのほか、負傷からシーズン途中で復帰したアレックス・カブレラを擁する西武の3チームである。優勝はこの年から導入されたプレーオフで2位から下克上を決めた西武となった。ベスト10圏外の注目選手としても、追い上げに貢献したカブレラを挙げた。故障の影響か、前2年に比べるとwOBA.423と低いが、長打率.644を記録するなど長打力は健在だった。
 
 この年は近鉄とオリックスの合併に端を発するプロ野球再編問題が起こったシーズンである。史上唯一のストライキや新球団参入騒動、優勝を期したアテネ五輪で豪州に2敗を喫して敗退など、さまざまな意味で記憶に残る激動のシーズンであった。しかしそれからすでに16年が経過していることには時の流れの早さを感じさせる。

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