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秋山・清原・デストラーデのAKD砲が完成 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~1990年編~

2020/09/22

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Getty Images, DELTA・道作



1990年のパ・リーグ

チーム   試合 勝率 得点 失点 得失点
西武    130 .643 634 487  147
オリックス 130 .548 690 619  71
近鉄    130 .528 678 638  40
日本ハム  130 .512 570 542  28
ロッテ   130 .445 571 622  -51
ダイエー  130 .325 522 757  -235
 

 
 強大なチーム力で西武がリーグ戦を圧倒したシーズンである。この後3年ほどが西武ライオンズの歴史の中で最も強かった時期にあたる。その流れを象徴するかのように清原和博(西武)が前年に続き、wRAAランキング1位となっている。wRAAは53.1。1打席あたりの得点貢献を示すwOBA(※3)、出塁率、長打率でもいずれもリーグ首位となった。OPS(出塁率+長打率)は1.068。この年がおそらく清原のベストシーズンになるだろう。

 ちなみにこの年の清原が記録した105四球は、1968年野村克也(当時南海)の記録を破るパ・リーグ新記録であった。清原は1986年の新人シーズンから勝利換算(※2)の数字を毎年改善するなど、着実に成績を向上させていた。それだけに翌年以後の低迷は正直なところ予想外であった。この後、規定打席に達したうえで、新人時代に記録したOPS.976を上回ったシーズンは引退までなかった。
 
 2位以下は、マイク・ディアズ(ロッテ)から6位門田博光(オリックス)まで長距離打者が並んでいる。ただその中でもディアズの出塁率.435は頭ひとつ抜けており、これがwRAAで清原に迫った一因となっている。乱闘シーンの記憶がつい想起されてしまう打者だが、打席では忍耐力を発揮していたようだ。
 
 4位オレステス・デストラーデ(西武)はこの年からフル出場で、42本塁打、101打点で本塁打王と打点王を獲得。打点王は9位の石嶺和彦(オリックス)と分け合ってのものであった。ベスト10の中には30本塁打クリアが7人、20本台が2人と長距離打者がずらりと並んだ。そんな中、3本塁打でランクインした西村徳文(ロッテ)が異彩を放っている。西村はこの年も出塁率.418を記録するなど、出塁のスペシャリストだった。
 
 オリックス勢からは4人がランクインしている。この年はチームの主砲であるブーマーがシーズン3分の2ほどを欠場。そのためブーマーがランキングから外れているが、それでもベスト10に多くの打者を送り込んだ。しかもブーマーを欠きながら、得失点差は前年より改善している。この年は結果的に2位に終わったが、不運に見舞われなければ、前年同様波乱を起こすチャンスはあった。
 
 ベスト10圏外の打者は秋山幸二(西武)。すでにこれまでベスト10入りしてきた打者だが、この年はわずかに漏れている。ただし51盗塁(失敗9)で盗塁王を獲得しており、長打力、守備力と合わせた能力の高さを見せつけた。この年、西武はクリーンナップに秋山・清原・デストラーデが揃った。いわゆる「AKD砲」である。西武黄金期における攻撃の形はこの年に定まっていた。

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