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横浜DeNAに浸透するコンディショニングの重要性。アスレティックトレーナーが大切にするコミュニケーションとメンタルケア

長いシーズンを戦い抜く上で、アスレティックトレーナーの果たす役割は非常に大きい。では、実際にアスレティックトレーナーは日々どのように選手を支えているのだろうか。一軍チーフアスレティックトレーナーである四角純哉氏に話を伺った。

2019/05/23

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横浜DeNAベイスターズ



トレーナーもファミリーの一員

 ゆえに自分の仕事を100%する一方、冒頭で述べたように選手たちにも自立を求める。
 
「わたしたちが一番選手に言っているのは、自分たちで問題に気づけるようになってくださいということです。その意識がないと私たちがいくら頑張っても歩み寄れないところが出てきてしまう。ただ、私は選手たちを信じています。私たちが見えないところで努力をしている選手もいますからね」
 
 そしてアスレティックトレーナーがシーズン中に直面するのが、チームの戦力に大きな影響を与える故障者による戦力ダウンだ。いわずもがな、レギュラークラスの選手たちは、誰もが大なり小なり故障を抱えている。そして多少無理をしてでも選手たちは試合に出たがるものである。チームの勝利に貢献したい、あるいは手に入れたポジションを失いたくない、と必死だ。しかし無理をし過ぎれば取り返しのつかないことにもなりかねない。そのあたりの見極めをアスレティックトレーナーとしてどのように考えているのだろうか。
 
「そこはやはりコミュニケーションが重要になります。シーズン中、ギリギリのラインを攻めるということはたくさんありますし、選手の気持ちも大事にしたい。ただ、客観的に見て本人にもチームにもマイナスになるのならば相応の判断も必要となります。きちんと落としどころが見つかるように常にコミュニケーションはとっています」
 
 ベンチ裏で何が起こっているかはわからないが、シビアな状況があることは想像に難くない。「何もない日はありませんね」と四角アスレティックトレーナーは苦笑する。
 
 だからこそ選手が健やかに高いパフォーマンスを発揮してくれるのが何よりも嬉しい。
 
「あと選手が成長していく姿を間近で見られるというのも仕事冥利に尽きますね。何かをきっかけにシーズン中であっても急に伸びていく選手はいますからね」
 
 キャンプからチームに帯同し、シーズン中はベンチ裏で控え戦況を見つめ、時には迅速に対応するアスレティックトレーナーたち。筒香嘉智が言う“ファミリー”の一員であり、勝利こそが最高の喜びだ。
 
「クライマックスシリーズや日本シリーズも経験させてもらい、みんなで泣いたり笑ったり、悔しがったり喜んだり、一体感というか貴重な時間を共有できる、やりがいのある仕事だと思っています。これからもチームの勝利に貢献できるよう、全力で頑張っていきたいと思います」
 
 力強い表情で言葉に力がこもる。
 
 四角アスレティックトレーナーが望むように、身体への知識や関心がチームの“文化”となる日が来ることを期待したい。

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