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交流戦勝率1位ヤクルト、小川監督の“マネジメント改革”が奏功 投手陣整備で「犠打いらず」の攻撃的パターン導く

 プロ野球セ・パ交流戦で東京ヤクルトスワローズが球団史上初の勝率1位を決めた。セントラル・リーグでは交流戦前まで最下位に沈んでいたチームが、交流戦でここまで躍進した要因はどこにあるのだろうか。

2018/06/18

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アグレッシブ野球「2番・青木」で攻撃に幅

 ヤクルトが交流戦の勝率1位を決めた。
 
 交流戦が始まるまでは17勝26敗と大きく負け越していたチームが、なぜ、これだけ変貌を遂げることができたのだろうか。
 
 数字だけを見てみると、1試合平均1個の犠打とペナントに比べて防御率が下がったことが大きな要因に挙げられる。
 
 しかし、数字だけを見ていると、ヤクルトの本当の強さは見えてこない。注目すべきは小川淳司監督のマネジメント力だ。
 
 そもそも、今季のヤクルトは開幕から犠打数が多かった。昨季までリーグで3番目に犠打数が少ないチームだったのが、宮本慎也ヘッドコーチの就任が影響しているのか、1試合5犠打、4犠打することもあった。しかし、多くのメディアが犠打数の多寡を報じたくなる気持ちも分かるが、それと交流戦からの変貌はリンクしない。
 
 犠打「数」ではなく、注目すべきはその使い方だ。
 
 ヤクルトが交流戦で決めた犠打は11個。これを序盤(1~3回)、中盤(4~6回)、終盤(7~9回延長含む)と3分割していくと、1:5:5と分かれる。レギュラーシーズンはどうかというと、10:12:17。ちなみに、投手のバント数はカウントしていない。
 
 試合終盤に送りバントが多くなるのは当たり前だ。決勝打になる1点、勝負を決めるダメ押しになる1点を取るために、得点圏に走者を進めようとするのは至極当然の事だからだ。しかし、序盤となると、その使い方はチームの方針と言っていいだろう。
 
 1回から1点を狙いに行くのか。より多くの得点を狙いに行くのか。
 
 交流戦になって、ヤクルトの序盤犠打数が激減したことは戦い方そのもの変化とみて良いのではないか。
 
 その変化の象徴となっているのが打順だ。ヤクルトは交流戦が始まる1週間前から、それまでチームトップの犠打数だった西浦直亨内野手の打順を2番から6番以降に下げている。代わりに2番に青木宣親外野手を置くようにした。
 
 この変更から伝わるメッセージは分かりやすい。1番を打つ山田哲人内野手が出塁すると、お決まりのバントをするのではなく、幅広い攻撃を仕掛けることで試合を優位に進めていきたい。開幕したころに4番を打っていた青木の2番起用は、まさに、アグレッシブな野球への変革だ。
 
 もっとも、バントを否定しているわけではない。それまでの戦いでも、バントをしっかりと決めて得点につなげてきた。しかし、昨季から続く、ヤクルト投手陣の不安定さを考えた時に、序盤に少しでも多くの得点を挙げた方が試合を優位に進めることができるのは明らかだ。
 
 ヤクルトのように打撃陣に層が厚いようなチームは、その長所を最大限に生かしていくというのも1つの戦略といえるだろう。
 
 攻め方と防御率を切り離して論じる人は多いが、これらはリンクしている。
 
 例えば、昨季のリーグを圧倒的な力で勝ちぬいた広島やソフトバンク見れば一目瞭然だ。先発陣がゲームを作り、中盤以降をしっかりと締めるブルペン陣がいる。そうしたチームは序盤から1点ずつを積み重ねる戦い方で試合を優位に持っていける。
 
 しかし、そうではないチームが相手を上回っていくためには、ひと工夫が必要だ。防御率の高いチームが1点ずつを挙げたところで簡単にひっくり返されてしまう。先に主導権を握っていくことで、投手陣に余裕を持って投げさせることも戦いの中では必要なのだ。
 
 青木を初めて2番に置いた5月24日の阪神タイガース戦は犠打0で零封負け。翌25日の横浜DeNAベイスターズ戦はノーガードの打ち合いに臨んで5-14で惨敗したが、26、27日の同カードで、ともに犠打1つのみで競り勝って勝利を挙げると、勢い良く交流戦へと乗り込んだのだった。
 
 交流戦で最も印象的だったのは6月5日の福岡ソフトバンクホークス戦だ。序盤から打撃戦を挑んだヤクルトは4回までに12点を奪って試合を決めた。犠打は1つも記録していない。ソフトバンク戦は7日も犠打なしで4-3の勝利を挙げている。

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