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西武・大石達也、“脱力“も球威失わぬ理由。苦悩の豪腕右腕が掴んだ“メカニック“

鳴り物入りで埼玉西武ライオンズに入団した大石達也投手。昨季まで勝ちゲームで投げることが多かったが、今季はビハインドしくは点差が開いたときの8、9回に登板している。指揮官お墨付きの「リズムの良さ」は、チームを浮上させるカギとなりそうだ。

2017/04/17

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力みを出している

 ブルペンにおけるクローザーやセットアッパーの大切さは説明するまでもないが、大石のようにビハインドで登場するリリーフ投手の出来は、チームの浮沈に大きく影響する。12日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦は打たれれば逆転負けを喫しても不思議ではなく、14日のロッテ戦は無失点に抑えなければ逆転勝利への難易度は上がっていた。大石はそうした自身の役回りを理解する一方、チームのためにという意識は頭にない。
 
「チームのことを考えられれば一番いいんですけど、立場的にもそんな余裕はないですし。打たれたらファーム、と思いながらやっています。ホント、自分のためにという感じです」
 
 6球団競合のドラフト1位で入団した大石は、周囲から大きな期待を寄せられ続けた。だが結果を残すことができず、右肩の故障にも苦しんだ。早稲田大学時代に最速155キロだったストレートが130キロ代前半まで落ち込んだばかりか、洋服を着る動作だけでも右肩に激痛が走り、「何をしてもつまらなかった」と2014年夏には語っている。
 
 そうした苦境を打破するため、「自分のために」とシンプルに考えるようになった。自身の道を何とか切り開こうとする右腕の思考法を聞いていると、28歳となり、いい意味で力が抜けてきた様子が伝わってくる。
 
 マウンド上の姿を見ていても、投球フォームに余計な力を感じられない。大石が結果を残す上で、メカニックは極めて重要な要素だ。
 
 入団当時から、テイクバック時に右腕が背中側に入りすぎるため、リリースへの動作で前に持ってこようとする際、左肩が開きやすくなる悪癖を抱えていた。首脳陣から直すように指摘され続け、自分の投げ方を見失った。
 
 もがき苦しんだ末に2014年、コンパクトに投げるフォームに変えている。
「野手投げみたいなイメージです。上(半身)は下についてくるものだと考えて、下を先に動かす意識でやっています。極端に言ったら、ギリギリまで右足に体重を乗っけて、左足に移行する瞬間を一瞬で終わらせる」
 
 メカニック、つまり投球における力の生み出し方の基本は万人に共通するものだが、その動作における考え方には、それぞれの個性が表れるから面白い。
 
 たとえば前田健太(ドジャース)は極力、力を抜いて投球動作を行い、リリースの瞬間に爆発させるようなイメージだ。投手にとって、こうした投げ方は模範的と言われることもある。
 
 一方、大石の理想は“爆発”ではなく“加速”に近い。
「力をゼロからリリースで100にするよりは、ちょっとずつ力を入れていく感じです。実際、リリース以外でも多少力みを出しているつもりなので」
 
 大石の言う「力みを出す」とは、「力の放出を徐々に増やしていく」という意味だ。そうしたフォームから投じられるストレートは140km代の球速以上に、打者にとって速く感じられる。捕手の炭谷銀仁朗は、「『あっ!』と思うような(甘い)球が、ファウルになったりします」と説明するが、その理由は回転数の多さにある。

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