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西武・大石達也、“脱力“も球威失わぬ理由。苦悩の豪腕右腕が掴んだ“メカニック“

鳴り物入りで埼玉西武ライオンズに入団した大石達也投手。昨季まで勝ちゲームで投げることが多かったが、今季はビハインドしくは点差が開いたときの8、9回に登板している。指揮官お墨付きの「リズムの良さ」は、チームを浮上させるカギとなりそうだ。

2017/04/17

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大石のストレートはトップクラス

 昨今、ダルビッシュ有(レンジャーズ)や上原浩治(カブス)のフォーシームが打たれにくい理由として「スピン量」に注目が集まるなか、大石にも同じことが言える。弾道測定器「トラックマン」で計測すると、大石のストレートはリーグトップクラスの回転数を誇るという。スピンの効いたストレートは打者にとってホップしてくるように感じられ、差し込まれるケースが多くなる。
 
「昔から回転がいいと言われていました。中学のときには、『回転がきれいすぎるから打たれる。回転を汚くしろ』と言われたこともあります。(その言葉の)わけがわからず、そのままずっと来ましたけど」
 
 そう言って笑った大石だが、中学の指導者がうまく説明できなくて良かった。カットボール系やツーシーム系の“汚い真っすぐ”を教えることができていれば、現在の大石が誇る回転数の多いストレートは失われていたかもしれない。
 
 大石はスピンの効いたストレートを意識的に投げているわけではなく、結果的にそうなっているだけだという。他者がなかなか持っていないような武器は偶然の産物であり、投手として天賦の才でもあるのだ。
 
 もっとも近年、そうしたボールを1軍で投げられるようになったのは、自分に合った投球フォームを見つけ、余計なことを考えずにマウンドに立っているからに他ならない。心の脱力が、他者にとってなかなかマネできないような武器=回転数の高いストレートとなって表れている。現在の役回りはビハインドの試合が多いとはいえ、さすが6球団にドラフト1位指名されただけの投手である。
 
 14日のロッテ戦後、大石の心の内をのぞき見ようと、かつてクローザーやセットアッパーを務めていたことについて聞いてみた。その場所に戻りたくはないのか、と。
 
「投げるからには勝ちパターンで投げたいです。でも、いま7、8、9回はマキさん(牧田和久)、シュリ(シュリッター)、増田(達至)で安定しているので、いまは自分の任されたことをゼロに抑えることだけを考えて。それで結果的に勝ちパターンに入れればいいですけど、いまは自分の仕事をきっちりするだけです」
 
 思いは心の深くに秘めておけばいい。その心の持ち方、いい具合の力の抜け方こそ、ドラ1右腕が飛躍するために必要だったのかもしれない。
 
 決して選手層の厚くない西武にとって、ビハインドの展開を逆転につなげられる大石は、いまや不可欠な戦力だ。今後シーズンが進んでいくにつれ、その存在感は一層高まっていくはずである。

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