「おおお! ライデルからまた打った!」。中日ドラゴンズの主砲・細川成也、CS進出はこの男のバットにかかっている【コラム】
2025/08/04 NEW
産経新聞社
「二軍では打つが、一軍に上がると打てない」の繰り返し
だが、ポストシーズンで活躍しながら、その後の細川は「二軍では打つが、一軍に上がると打てない」の繰り返しで伸び悩んだ。打線が強力なDeNAでは、一軍で相当打たない限りレギュラーの座は望めない。高いポテンシャルを持ちながら、なぜかくすぶってしまった結果、細川はプロ6年目のシーズンを終えた2022年オフ、現役ドラフトのリストに載ることになった。竜党からすると「ベイスターズさん、よくぞ載せてくださった!」だけれど。
細川はドラゴンズ移籍にあたって「これがラストチャンス」という覚悟を持って名古屋に来たはずだ。最初につけた背番号「0」がその決意を物語っている(現在は「55」)。そして幸運な出逢いもあった。和田一浩・前一軍打撃コーチに春季キャンプ中マンツーマンで指導を受け、「間の取り方」を学んだことで才能が開花。移籍1年目の2023年、開幕一軍の座をつかみ代打でいきなり結果を出すと、立浪前監督は細川をレギュラーで起用、中軸を任すようになった。その後の活躍はご存じの通りだ。
しかし恩師・和田コーチが去った移籍3年目の今季は、細川にとって苦難のスタートになった。3月29日、開幕2戦目のDeNA戦で自打球を当てて2試合スタメンを外れ、その影響もあってか春先は精彩を欠いた。今季1号アーチは、開幕9試合目の東京ヤクルトスワローズ戦で奥川恭伸から放った同点弾だった。実はそれが今季チーム第1号で、ドラゴンズは前日まで12球団で唯一ホームランが出ていなかった。そんなことも余計なプレッシャーになっていたのだろう。その後も打率1割台となかなか調子は戻らず、5月5日のDeNA戦で全力疾走した際、ついに右太もも裏が悲鳴を上げた。たぶん、いろいろな無理が重なっていたのだと思う。
責任感の強い彼のこと、自分が抜けた間、得点力不足に苦しむチームを見ていて「一刻も早く戻りたい」とジリジリする思いだったろう。だからといって無理をしては元も子もない。この1ヵ月半に及ぶ離脱期間は、細川にとって満身創痍の体を休め、自分のバッティングを見つめ直すいい機会になった。