若手よ、見ているか!?「負け犬根性が染みついたチームを変える」移籍組のひたむきさを。東京ドームで見た、中日ドラゴンズの歓喜と虚無の3日間
2025/05/22
産経新聞社
生まれるべくして生まれた「代打逆転2ラン」
またこの試合、板山にはもう1つ発奮材料があった。そう、山本の2連発である。山本は2020年オフ、巨人から金銭トレードで阪神タイガースへ移籍し、2021年から3シーズンプレー。元阪神の板山はその間、山本とはチームメイトだった。しかも2人は同学年で、2023年オフ、ともに阪神を戦力外となりドラゴンズへ移籍。山本の活躍を目の前で見て「よぅし、自分も!」と思わなければウソだろう。
阪神コーチ時代から2人を見てきた井上監督は、そのあたりの心理をよくわかっていた。冒頭に記した起死回生の「代打逆転2ラン」は、生まれるべくして生まれたのである。前2試合のモヤモヤは、板山の1発で完全に吹き飛んだ。
試合は8回、ジェイソン・ボスラーがダメ押しの2ランを放ち、最後は守護神・松山晋也が締めて7-4で快勝。まさか、ホームラン4発の空中戦で勝つなんて。チームの連敗も、巨人戦連敗も、東京ドームでの連敗もすべて止める、久々に爽快な逆転劇だった。試合後、井上監督は、山本と板山についてこう語った。
「いいところも悪いところも、僕は知っているつもり。山本ヤスは本当に素晴らしい守備をするかと思えばたまに集中力が切れる。だけど集中したときには素晴らしいバッティング、守備をする。板山もくすぶっていた阪神時代から『ドラゴンズに拾ってもらったという思いは持ち続けろよ』と言ってきた。最近は打席に飢えていた。アイツの喜びは格別だと思う」
井上監督の言う通り、2人とも一長一短ある選手で、だから戦力外という苦い思いもした。だがそういう経験をした選手こそ、少ないチャンスを生かそうと目の色を変えてプレーすることを井上監督はよくわかっている。その「必死さ」が、簡単にゲームを諦めないことにつながり、負け犬根性が染みついたチームを変える ――― 井上監督が勝負所で彼らを起用する理由はそこにあると思う。
生え抜きの若手たちには、彼らの野球に懸けるひたむきさをもっと学んでほしい。「なんでオレを使わないんだ!」とアピールするぐらいじゃないと、レギュラーなんか永久に獲れないぞ。
【了】