憧れの存在が目の前にいる。伝統を受け継ぎ、新たな息吹が宿る西武。名門復活の鍵を握る“2人の若獅子”が覚醒へ
2025/05/22 NEW
産経新聞社

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屈辱の91敗から一転、貯金生活を送っている埼玉西武ライオンズ。その勢いを象徴するのが、5月17日のオリックス戦で劇的勝利を呼び込んだ山田陽翔と滝澤夏央だ。名門出身の山田と育成上がりの滝澤。対照的なキャリアを持つ若獅子たちが、チームの未来を切り開く。(文・羽中田)
「1試合1試合、一軍という舞台を楽しみながら投げています」──お立ち台ではにかみながら語った山田陽翔の笑顔は、今季の西武に吹き込まれた新たな息吹を象徴していた。5月17日のオリックス戦では、西武の未来を担う若き2人が、劇的な勝利を呼び込んだ。
この日、延長10回表を山田がわずか9球で三者凡退に抑えると、その裏、打席へ向かった滝澤夏央がこの打席でサヨナラ打を放った。山田にとってはプロ初勝利、滝澤にとってはプロ初のサヨナラ打という、2人にとって忘れがたい記念日となったのだ。
新生・西武において覚醒の気配を感じさせる山田と滝澤だが、両者は対照的な道を歩んできたとも言える。
注目を浴びた高校時代。高卒3年目で大きく飛躍
山田は、甲子園通算11勝という実績を引っさげ、2022年ドラフト5位で西武に入団。鳴り物入りでプロの世界へ足を踏み入れた。
プロ入り後は一軍争いに加われず、苦しい時期を過ごした。そんな山田が飛躍のきっかけをつかんだのは、台湾ウインターリーグでの経験だった。9試合の登板で、防御率0.82という圧巻の成績を残したのだ。
そこから、チームの先輩右腕・森脇亮介の投球フォームを徹底的に研究し、中継ぎ右腕としての自身のスタイルを構築していった。フォームの安定とともに制球力も向上し、プロの打者を前にしても怯まない強いメンタルが際立ってきたのだ。
今季は開幕一軍こそ逃したものの、3月29日に一軍登録され、4月3日の敵地・楽天戦でプロ初登板。冷たい雨の中での登板ながら、1イニングを無失点に抑える堂々たるデビューを飾った。
5月17日のオリックス戦でついにプロ初勝利を挙げた山田は、「重たい」と表現した記念球を手に、初々しい笑顔を浮かべながらも、チームの勝ちパターンを担う責任感をにじませた。
山田はここまで13試合に登板し、いまだ無失点投球を継続中だ。甲子園のスターとして注目を浴びながらも、地道な下積みと努力で飛躍を遂げた選手と言える。
一方、山田の初勝利を支える決定打を放った滝澤は、育成から這い上がった選手だ。山田の1学年先輩に当たるが、関根学園高で甲子園出場経験はなく、決して全国区ではなかった。