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消えた「鎌スタの夢」。ドラ1吉田輝星のトレードから浮かび上がる、球団の宿題【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#213】

2023/11/26

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産経新聞社



ファン感参加3日後のトレード

 ファン感謝デー「エフ フェス(F FES)」の翌日、驚天動地のトレードが発表になった。日ハム・吉田輝星―オリックス・黒木優太の1対1トレードだ。僕も寝耳に水だったが、もっと驚いたのはエスコンの「エフ フェス」に行って、ボアジャケット姿のクリスマスデート・コーデに拍手を送ったりしたファンだろう。僕もあわてて輝星関連の「エフ フェス」動画をチェックした。球団公式Xアカウントで香水をおススメしたりしている。「契約更改3日後の電撃トレード」と報じられているが、果たしてこの動画の時点で輝星はトレードを知っていたのか。それともイベント終了後に知らされたのか。すべて飲み込んでいたにしてはあまりにも屈託ない笑顔なのだ。両球団から正式にトレード成立のリリースが出て、火の球ストレート・吉田輝星は正式にオリックスの選手となった。
 
 僕がトレードの一報を受けて最初に思ったのは「あぁ、これで輝星―裕涼のバッテリーをエスコンで見ることはないんだなぁ」であった。2018年のドラ1、吉田輝星はプロ5年、1軍通算成績は64試合、3勝9敗5ホールド、防御率6.23だ。主戦場はイースタンリーグ、本拠地は鎌ケ谷スタジアムだった。そこでいちばんバッテリーを組んだのは田宮裕涼じゃないかと思う。いいときも悪いときも輝星には裕涼がついていた。今年はシーズン終盤、その田宮裕涼がブレークした。バッティングも肩も絶好調、好捕手の揃ったファイターズにあって「自分も忘れちゃ困る」とばかりに猛アピールした。僕は来季こそ輝星―裕涼のバッテリーがエスコンで見られると小躍りしたのだ。それは「鎌スタの夢」みたいなもんだった。
 
 入団5年目の「トレード放出」は高卒ドラ1史上最速なのだという。僕は「トレード放出」という言い方が好きじゃないので、そこに与(くみ)したくないが、3勝9敗5ホールドの投手はそういう報じられ方になってしまうのかと思う。輝星は昨シーズン(2022年)、51試合に登板して1軍の戦力になるきっかけを手にしていた。キャンプの藤川球児臨時コーチの指導でストレートが走るようになっていた。それが今季(2023年)たった3試合登板に終わる。いいときのピッチングを忘れてしまった。輝星はうなるストレートがなければ並の投手なのだ。そうか、今年は大事だったんだなぁと今更のように考えてしまった。
 
 トレード発表を受けて輝星が発したのはまるで謝罪コメントだった。「ドラフト1位でファイターズに獲得してもらって、5年間優勝に貢献するような活躍ができず申し訳ないですし、すごく悔しいです」。「ですし」口調が気になるが、球団広報を通したコメントは全員「ですし」になるので、そこは気にしなくてよい。輝星は色んなものを背負ってたんだなぁと感じた。「ドラフト1位」も「甲子園のスター」も、プロ入りしてからは相当な重荷になっていたに違いない。僕もコラムで「新球場のエースに」と書いて、先発という重荷・縛りを与えていた一人かもしれない。ショートイニングをやらせた方が「1軍の戦力」としてはずっと近道だったのに。

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