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奈良間大己、打って評価をひっくり返せ。レギュラー獲りへ千載一遇のチャンス【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#205】

開幕前、今年のショートは上川畑大悟で固定だろうと予想するファンが多かった。しかしシーズンが始まると上川畑が打撃不振で苦しみ、二遊間が固定できない状態が続いた。だからこそ、今シーズン奈良間大己にとってはレギュラーを奪う大チャンスなのだ。

2023/08/06

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産経新聞社



打てばチャンスを掴める

 それにしても奈良間大己のプレーだ。今はコリジョンルールがあるから野手は交錯プレーから守られるようになった。昔は「ゲッツーつぶし」のスライディングが当たり前に行われてたから、セカンド&ショートはランナーのスライディングをかわして「4-6-3」「6-4-3」の3(ファースト)への送球をしなきゃならなかったのだ。だもんでダブルプレー時、野手はセカンドベースを(厳密な意味では)踏んでいなくても、タイミングがアウトだったら取ってもらえた。何しろベースを踏んだ足めがけてランナーが(時にはスパイクの歯を向けて)スライディングしてくるのだ。
 
 だから、僕の若い頃の「名ショート」「名セカンド」はひらりと走者をかわして1塁送球の、その「ひらり」のところが華麗だった。ニュアンスはプロレスのタッグマッチで(厳密な意味では)タッチしてなくても、大体自分のコーナーに戻ってきたら「タッチ交代」と見なされるのに似ている。そこはそんなに重要視されなかった。その意味で奈良間のプレーは昭和の昔なら不問に伏されただろう。今はベースを踏んだかどうかは非常に重要だ。
 
 奈良間は3回表、5点目のタイムリーを放ち、その裏ダブルプレーをミス(ベース踏み忘れ)してしまったのだから、この攻防の光と影を一身に体現してしまった。だけど、気持ちの強い選手で、そんなことににめげずハッスルプレーを見せてくれた。今回の1軍昇格では二遊間のスタメン起用が続いている。彼の思い切りのいいバッティングが打線活性化に必要ということだろう。
 
 個人的な感想を言えば二遊間は固定してほしい。ファイターズは捕手も二遊間もセンターも、つまりセンターラインが固定されない状況で8月を迎えている。「ポジション争い」「競争原理の導入」みたいな言葉は、ふつうは春先に聞くものだ。まぁ、逆に言えばそのおかげで奈良間大己に再チャンスが訪れたわけでもあるから、一概に否定はできないが。
 
 奈良間の側からこの状況を見れば千載一遇のチャンスだと思う。ファンはもちろん、ファイターズに関わる解説者、評論家の多くが2023年シーズンのショートは上川畑大悟だと思っていた。が、2年目の上川畑が打撃不振に陥った。案外、不振が長い。そして、売りものの守備でもミスが出ている。
 
 奈良間は打てばいいのだ。打てばチャンスを掴める。評価をひっくり返し、今からでも「2023年のショートは奈良間が守った」ということにしてしまえる。ここからシーズン終盤の印象が大きいのだ。
 
 とにかく一個一個のことにめげちゃいけない。積極的に行こう。今、がんばれば昭和ならぬ「令和の名ショート」の高みまでたどり着けるかもしれない。

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