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苦しむ伊藤大海、一流になれる資質があるからこそ与えたい「工夫し、研究する時間」【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#198】

侍JAPANの一員としてWBC優勝に貢献した伊藤大海が苦しんでいる。メンタルの問題なのか、メカニックの問題なのか。今、伊藤に必要なのは果たしてなんだろうか。

2023/04/30

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産経新聞社



調子が上がってこない

 伊藤大海が心配でならない。4月25日のオリックス戦は予告先発が発表になり、宮城大弥との「侍ジャパン対決」と注目を集めたが、フタを開けてみればまさかの両者KO(伊藤4回6失点、宮城1回2/3 5失点)だった。試合展開は先に伊藤が3失点し、次の回、味方が5得点して逆転してくれたのだった。伊藤はまだ勝ちがなく、波に乗れていなかった。チームメイトの援護は「大海に勝ちをつけよう」という気持ちの表れだった。
 
 が、自滅する。4回84球投げて被安打6、与四球5の6失点。新庄剛志監督は四球の多さに苦言を呈した。これだけ四球が多ければ、そりゃ点も取られるし、野手もリズムがつくれない。これで今季は4試合(21回2/3)に登板して、0勝3敗、防御率5.82、被安打22、与四球11、自責点14と「エース格」を期待されてるとは思えない内容に終始している。
 
 何よりファンが衝撃を受けたのはオリックス戦5回降板後、ベンチに戻り、床に崩れ落ちイスに顔をうずめる、悄然とした姿だった。僕は一瞬、足の不調か何かでイスに倒れ込んだのかと思った。ベンチ内は気まずそうな空気だった。今はそっとしておくしかない。GAORA中継のカメラはそんな伊藤大海の姿を映し続けた。ファイターズの今シーズン序盤戦の苦闘を、ある意味象徴するシーンだった。新庄監督のロケットスタートは完全にアテが外れた。
 
 ロッテ戦(19日)で2敗目を喫したときは「魂を燃やし切れていない。メラメラした感じがない」とコメントしている。6回、続投のマウンドには「恰好悪くてもいい。自分を奮い立たせよう」と全力疾走している。以前からWBC出場選手のバーンアウト(燃え尽き症候群)が問題視されているが、もしかしてそういうことなのだろうか。コメントの上では伊藤は「WBCはもう終わったこと」と否定しているのだが。
 
 OB解説者の鶴岡慎也氏はメディアを通じ、再三「伊藤投手はメンタルではなくメカニックの問題ですから」と発信している。「魂を燃やし切れていない」せいではなく、フォームに狂いが生じているという指摘だ。僕も投球フォームを以前のものと見比べてみたが、体重移動が流れている印象だ。しっかり軸足に体重を乗せて、内転筋で粘れない。身体の開きが早くなり、打者からは見やすくなる。手の振りも変わってしまう。僕はそれがなぜ生じたのかはぜんぜんわからない。WBC出場の影響で身体が(本人が感じているより)疲れているのか。
 
 僕は伊藤大海の「自分で考える」姿勢を一流になれる資質だと考えている。他人のアドバイスを聞かないわけではない。むしろ、積極的に聞く方だ(このオリックス戦でも元ハムの石川亮捕手に助言を求めていた)。が、突き詰めるときは自分で考える。研究し、工夫する。学生時代からそれでやってきたのだ。それでプロになれた。(特に投手がそうだが)考えない選手は大成しない。
 
 それでも「メカニックの問題」が生じているということは、本人が気づかない微妙な狂いなのだと思う。昔と違って今は映像だけでなく、球速や回転数を計測するなど、「本人の実感」と「客観的なデータ」をすり合わせる環境が整っている。投球練習中にデータを確認して、フィードバックできるのだ。「自分で考える」タイプには願ってもないことだ。自分の状態をセルフマネジメントできる。

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