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キャンプ初日の紅白戦で再確認。2023年チームのヘソは「3番・松本剛」【えのきどいちろうのファイターズチャンネル#192】

ビッグボスフィーバーだった昨年と雰囲気は一変、キャンプ初日から紅白戦を実施した。今シーズン、新庄監督はレギュラー固定の意向を示しているが、チームのキーマンとなるのはやはり松本剛だ。

2023/02/04

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産経新聞社



格の違いを見せた松本剛

 で、紅白戦、いちばん強烈な印象を放ったのは他ならぬ松本剛だった。独特の間。バットの芯で弾き返す。やはり鶴岡慎也さんが「テニスラケットみたいにバットに『面』があって、そこで打ち返してるイメージ」と表現する。そうだ、松本剛の打球はグランドストロークのようだ。初打席から痛烈な当たりで、僕は冷たい水で顔を洗ったみたいな気分になった。剛はチームのヘソだ。この日、打順は3番に入ったが、本番でもこんな感じじゃないか。この男がキーマン。
 
 当コラムで前回、上川畑大悟と石井一成の役割を語った。打線を繋ぐジョイント役。接着剤。野村や清宮のような「大駒」には果たせない役割だ。喩えとして名前を出したのは金子誠、田中賢介、森本稀哲。野球を知っていて、状況判断ができるプレーヤー。そういう選手が育たないとチームは強くならない。で、上川畑、石井ピンに輪をかけてこの仕事ができるバッターが「チームのヘソ・3番松本剛」だと思った。ファイターズでいちばんいいバッターが打線を「線」にする。
 
 僕の理想は「2番上川畑」「3番松本剛」なのだが、相手投手にかける重圧は雪だるまを思い浮かべてほしい。例えば「1番五十幡」が四球で出塁する。五十幡は走るかもしれないし、「2番上川畑」がエンドランを仕掛けるかもしれない。ここで重圧をかけ、神経をすり減らしてもらう。盗塁やエンドランが決まって得点圏に走者を置いて(エンドラン崩れで一死2塁でもいい)、そこで「3番松本剛」なのだ。返すバッティングもチャンスを広げるバッティングも両方できる。重圧の雪だるまはどんどん大きくなる。で、さらに神経をすり減らしもらって「4番野村」「5番清宮」と返すバッターが続く。僕はこれ、野村清宮がシーズン30発ずつ残しても、ヘソは松本剛だと思う。100パー、剛の姿勢がチームの方向性を決める。
 
 紅白戦は上川畑、石井ピンも結果を出した。ピンちゃんなんてホームランだ。キャンプ序盤はバッターの方が(生きた球を打ってない分)出遅れるものだけど、ホントに仕上げてきた感じ。今川優馬も一発回答だった。投手が皆、抑えがきかなくて、球が上ずってたのと対照的に打者はカンカンよく打った。
 

奈良間のアピール、見どころの多い初日

 強烈な印象を残したルーキーがいる、ドラフト5位の奈良間大己。172cmと小兵ながらバチンッと叩けるんだよ。「守備の人」かと思ったら小気味のいいバッティングしてる。常葉菊川のときを思い出した。甲子園で見て、こりゃいい選手だなぁと思った。ファイターズは左バッターが多いから、右の仕事師タイプは面白い。去年の上川畑じゃないけど、ドラフト下位からゴボウ抜きでレギュラー奪取ってこともあり得る。
 
 ドラ1の矢澤宏太は気負いすぎ。奈良間が全打席、勝負にいったのと違い、自分と闘ってしまっていた。もっとも身体のキレ、センス、スピード感等、並じゃないものは見せてくれた。
 
 矢澤はこの日、「2番DH」でスタート、途中からライトの守備に入ったんだけど、面白かったのは森本稀哲コーチがポジションの脇について、一球一球、こう動いてこう準備するんだって実地指導していたこと。気がつくと外野は新庄監督、稲葉GM、ひちょりコーチとかつてのゴールデングラブ賞が実地指導している。紅白戦の最中、ポジション脇で指導って画期的じゃないか。
 
 キャンプイン初日はつまり、なかなか見応えがあった。大概、2日目でガクンと落ちる。それだけいっぱいいっぱいで「プロ生活の一年の計」を迎えるということだ。心配は今のところ、加藤豪将の骨折(右手指)と齋藤友貴哉の異変(1球投げただけで降板)だけだなぁ。中身の濃いキャンプにしてほしい。

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