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【2022DeNA・戦力分析】捕手・遊撃手の育成と、牧秀悟の起用法がポイント

2022/03/04

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DELTA・竹下弘道



2.各ポジションの「得失点差への寄与」は?

 DeNAはどのように得失点差を改善すればよいだろうか。それを考えるために、各ポジションの状況を掘り下げて見ていこう。各ポジションが得失点差に対して何点分の寄与をもたらしたかという観点で、チームの強みと弱みがどこにあったのかを確認する。
 
 まずは野手からだ。野手は打撃で得点を増やすか、守備で失点を減らすことで得失点差を改善することができる。打撃はwRAA、守備はUZRという指標を用いて、各ポジションが得失点差に何点分の寄与をもたらしたかを計算した(図2)[1]。数値はレギュラーの個人成績ではなく、レギュラー以外も含めたチーム全体の成績という点に注意いただきたい。
 

 
 DeNAの弱点は捕手と遊撃手だ。どちらもプラスを計上できる選手がおらず、シーズンを通してスタメンを固定できない中、マイナスが積み上がった。得失点差マイナスの大部分は、この2ポジションからもたらされている。
 
 一方、チームの強みとなったのが右翼手だ。ここはタイラー・オースティンが規定未達ながら打撃で莫大なプラスをもたらした。また、佐野恵太の左翼手も打撃のプラスを大きく出している。しかし、こちらは守備のマイナスが大きいために強みにはなっていない。左翼手は守備の苦手な外野手が配置されがちだが、佐野の守備はその中でもワーストレベルだった。
 
 そして、新人の牧秀悟が一塁手と二塁手の寄与を押し上げた。しかし、牧以外の選手によるマイナスが大きいため、いずれも強みとならなかったのは痛いところだ。牧がいなければ、一塁手と二塁手はどちらも弱点になっていた可能性が高い。

 次に投手を見てみよう。ここでは先発と救援に分けて得失点差への寄与を確認する。投手は投球で失点を減らすことでこれに関与できる[2]。FIPという指標を使い、「先発と救援がそれぞれ得失点差に何点のプラス(マイナス)をもたらしたか」を計算した(図3)。
 

 
 投手陣全体ではマイナスを計上している。その中でも先発はDeNAの弱点ポジションの一つとなった。故障者が多く、控え選手でローテを埋めなければならなかったことが響いた格好だ。しかし、野手の弱点ポジションと比べるとマイナスは相対的に小さい。
 
 野手のデータと見比べてもらうと分かるが、DeNAは投手のマイナスよりも、野手が守備で計上したマイナスの方が大きい。DeNAは「投手力が課題」と評されがちだが、防御率が低迷した要因は投手力よりも守備力にあると見るべきだろう。

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