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ジャパンの4番・鈴木誠也が傑出。杉本裕太郎は歴史的遅咲き打者 セイバーメトリクスの視点で過去の打撃ベスト10を振り返ろう ~2021年編~

2022/02/08

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産経新聞社、DELTA・道作



2021年のセ・リーグ

チーム  試合 勝率 得点 失点 得失点
ヤクルト 143 .584 625 531  94
阪神   143 .579 541 508  33
読売   143 .496 552 541  11
広島   143 .481 557 589  -32
中日   143 .437 405 478  -73
DeNA   143 .425 559 624  -65
 


 
 鈴木誠也(広島)がwRAA56.9で2度目のリーグトップとなった。これは前回トップとなった2019年を上回る数字である。wRAAのほかにも、1打席当たりの貢献を示すwOBA(.449)や出塁率(.433)、長打率(.639)など、得点生産と関連の深い指標はすべて1位。やや少ない打席数で残された記録ということを考慮すると、打席においては他の選手と隔絶した攻撃力を示したということができる。去就は2022年のペナントレースにも大きな影響を与えそうだ。

 2位には村上宗隆(ヤクルト)が本塁打王を獲得してランクイン。筆者は本企画の2020年編において、高卒3年目までにリーグトップを獲得した選手がいずれもレジェンド級となっていることを記述した。過去には川上哲治、中西太、張本勲、イチローがこれにあたる。2021年の村上は1位には届かなかったが期待に違わず本塁打王を獲得している。これは中西と同じパターンである。1位にはならなかったものの、歴史的打者へ前進しつづけていると見るべきだろう。
 
 3位に常連の山田哲人(ヤクルト)を挟んで、4位に新人の牧秀悟(DeNA)が登場する。30点に迫るwRAAを新人がマークすることは極めて珍しく、21世紀では初の出来事である。ベスト10は新顔が4人、2度目が2人と、なかなかフレッシュな顔ぶれとなった。2位から5位には二塁手と三塁手が並び、本塁打王を2人の三塁手が分け合うのも珍しいかたちである。
 
 規定打席に達しなかった中で注目の打者はタイラー・オースティンを挙げる。前年も規定打席未到達の注目打者として取り上げたが、2021年は2020年を上回る強力な打棒を見せた。wOBAは鈴木に次ぐ2位相当、積み上げの数字であるwRAAも3位相当の数字を残し、すっかりDeNA攻撃陣の顔となった観がある。来日遅れと負傷離脱で規定に達しなかったのが惜しまれる。
 
 彼はアメリカ時代、2A、3A、MLBとカテゴリが進むほどに本塁打率が改善していた打者だ。MLBでも521打数で33本塁打を記録するなど放つ打球の質は高かったが、曲がる球、落ちる球に対して致命的な弱点があったため生き残ることができなかったようだ。ただ来日後のデータを見ると、それぞれの変化球に対してある程度対処することに成功している。五輪アメリカ代表に選考されるチャンスということで、モチベーションが高かったこともあるのだろうか。来日後に苦手分野を克服したという点で珍しく、印象深く残っている。
 
(※1)wRAA:リーグ平均レベル(0)の打者が同じ打席をこなした場合に比べ、その打者がどれだけチームの得点を増やしたかを推定する指標。優れた成績で多くの打席をこなすことで値は大きくなる。
(※2)勝利換算:得点の単位で表されているwRAAをセイバーメトリクスの手法で勝利の単位に換算したもの。1勝に必要な得点数は、10×√(両チームのイニングあたりの得点)で求められる。
(※3)wOBA(weighted On-Base Average):1打席あたりの打撃貢献を総合的に評価する指標。
(※4)平均比:リーグ平均に比べwOBAがどれだけ優れているか、比で表したもの。
 
 
DELTA・道作

 
DELTA@Deltagraphshttp://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~4』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
 

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