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MLBがついに「蔓延する不正行為」を正すか。サイン盗みより罪重い?ボールに塗る禁止物質の提供と使用

2020/03/07

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エンゼルスのベテラン職員が解雇の事態。「暗黙の了解」の一方で、多くの謎が謎のまま…

 ロサンゼルス・エンゼルスのベテラン職員が相手チームの投手たちに使用禁止物質を提供していたことを理由に解雇された。地元紙『オレンジカウンティ・レジスター』が5日(日本時間6日)に報じている。
 

 
 非常に不可解なニュースであった。解雇されたのはブライアン・“ババ”・ハーキンズ氏。1981年からエンゼルスでバットボーイとして働き始め、1990年からは本拠地エンゼル・スタジアムでビジター側クラブハウスの管理責任者を務めていた。
 
 約40年間の長い年月に渡ってエンゼルス一筋で働いてきたハーキンズ氏がなぜ相手チームに便宜を図っていたのか? 金銭的報酬を受けていたのか? 提供先は特定のチームや個人なのか? 使用禁止物質とは一体何なのか? 不正が行われていた時期はいつなのか? 
 
 『オレンジカウンティ・レジスター』の記事も、エンゼルス広報も、ハーキンズ氏が解雇されたこと以外には上に挙げた疑問への答えを何一つ明らかにしていない。
 
 その後の『CBS』など他メディアからの続報を総合すると、MLBが何かしらの調査を行い、ハーキンズ氏が相手チームの投手たちにボールに塗ることができる「ある物質」を提供していたことが判明したと推測される。
 
 MLBの投手たちが帽子のツバなどに松ヤニやそれに類した物質を潜ませ、ボールの握りを強くするために使っていることは、ほぼ公然の秘密とも言える。シアトル・マリナーズの菊池雄星投手も同様の疑惑が報じられたことがあるが、さして大きな問題には発展しなかった。
 
 ボールに異物を塗ることは、本来のルール上では退場の対象となる不正行為であるが、それが理由で罰則が下された例は多くない。仮にある投手が松ヤニを使用していたことが分かっても、相手チームは抗議をせず、審判も見て見ぬ振りをするのが暗黙の了解のようでもある。
 
 松ヤニが滑り止めの効果を生むことは、投手たちにとって有利に働くだけではなく、相手打者たちにとってもすっぽぬけた速球が頭部に飛んでくるリスクが減るからだと思われる。
 
 ハーキンズ氏が提供していた「使用禁止物質」が松ヤニであるかどうかは現時点では不明である。そもそも松ヤニのように合法的かつ簡単に入手できるものをわざわざ他チームの職員から受け取る必要性は低いと思われるので、あるいは全く別の性質を持った物質なのかもしれない。

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