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MLBのマイナー大幅縮少案に広がる懸念。もはや「ハンバーガーリーグではない」革新進む現況を日本人コーチに聞く【インタビュー】

メジャーリーグの舞台を夢見るマイナーリーグの選手たちに、選手生命を脅かす危機が訪れている。実際、多くの選手がその道を閉ざされる可能性が高い。かつてタフな環境から「ハンバーガーリーグ」と表現された組織だが、今日では様々な改革とともに選手の育成が進められている。メジャーリーグの根幹を揺るがしかねない懸念が広がる中、マイナーリーグの現場に立つ指導者は何を思うのだろうか。

2019/11/19

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セイバーメトリクス導入で指導のクオリティーも向上。「革新」と「古いタイプ」が共存した組織

――食事やトレーニング施設以外にも改革が行われているということですか?
 
三好氏「様々な背景を持つ人材を指導者として雇うこともその一つです。僕自身もそうですが、大学野球や独立リーグからメジャーリーグでの経験がない指導者を引っ張ってくる。彼らは若いのでフットワークが軽いし、セイバーメトリクスなどの新たな戦略にも柔軟に対応できる。マイナーリーグ全体を統括する方針もよく理解しますし、それにコストが安い」
 
――ルーキーリーグでもセイバーメトリクスを使うのですか?
 
三好氏「元々僕は独立リーグで初めてセイバーメトリクスを導入したチームで監督を務めた経験を買われて、ツインズ傘下のコーチになったのです。昨シーズンはデータから基づいた守備シフトを決める役割を担いました。プロ1年目の新人選手でもアマチュア時代まで遡る膨大なデータベースがあって、僕らコーチ陣はそれを使って作戦を練ります。そして、新しいテクノロジーは技術指導にも使われています。例えば投げ方のメカニックスを変えるとボールの回転率はこう変わる、という風に具体的に選手に示すことができる。目視と経験だけでやっていた時代とは指導のクオリティが全く違います」
 
――他のマイナー球団でもそのように新たな試みをしているのでしょうか?
 
三好氏「ツインズはどちらかと言えばイノベーター(革新的)の部類に入るでしょうね。古いタイプのオールド・スクール的な野球をしているチームもたくさんあります。それにツインズも新しい戦略一辺倒なわけではありません。僕がいるエリザベストン・ツインズのレイ・スミス監督は通算1000勝以上を挙げた名監督ですし、打撃コーチのジェフ・リードはメジャーリーグで通算17年間のキャリアを持っています。ツインズの面白いところは、彼らのような経験豊富な指導者をリスペクトしながらも、僕のような新しいタイプの人材と組み合わせるところでしょうね。もっとも僕自身は自分のことをオールド・スクール側の人間だと思っていますけど」

チームが密着した地域からは反発も

 エリザベストン・ツインズは1974年のチーム創設以来45年間、テネシー州にある同名の小さな町(人口約1万4000人)を本拠地にし続けてきた。テネシー州にはメジャー球団はなく、もっとも近いアトランタ・ブレーブスからも400キロ以上離れている。マイナーリーグにはこのように地域に密着したチームが多く、地元チームが消滅するかもしれない案に対して、各地の熱心な野球ファンからの反発は大きい。
 
 MLBのマイナーリーグ縮小案はこれから交渉が始まる段階だ。MLBとマイナーリーグ間で結ばれた現行の契約は2020年シーズン終了まで有効なため、仮に実施されるとしても2021年シーズンからということになる。現場では様々な改革が進むマイナーリーグの将来がどうなるのか、今後の経緯に注目したい。

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