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マリナーズ・菊池雄星、悔い残る3被弾。求められるセオリーの先の投球【雄星リポート第10戦】

シアトル・マリナーズの菊池雄星投手が13日(日本時間14日)、本拠地T-モバイルパークでのオークランド・アスレチックス戦に先発し、7回途中までを投げ、5安打3失点。3つの本塁打を浴びてリードを許したままマウンドを降りたが、味方が3点ビハインドを追いつき、菊池に勝ち負けはつかなかった。試合は延長10回、6−5でマリナーズがサヨナラ勝ちした。

2019/05/14

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 1回裏に、マリナーズの1番・ハニガーが左翼スタンドへ放り込んでスタートしたこの試合は、直後の2回表にアスレチックスの6番・カナの本塁打で振り出しに戻ると、投手戦で推移した。
 
 アスレチックスの先発・ファイアーズは今季、ノーヒッターを達成した好投手だ。そのファイアーズが初回こそ制球に苦しんだものの、イニングを追うごとに調子を上げてきたのに対し、菊池は持ち前のストレートが安定せずに苦しいピッチング。それでも、カーブを効果的に使うことで投げ合いを演じていた。
 
 投手戦が動いたのは、6回表だった。菊池は1死から4番のデービスに対し、カウント0−2と追い込みながら、決め球のスライダーをうまく拾われて左中間へ放り込まれた。投手戦の中での一発は致命的と言って良かった。
 
 この投球には伏線がある。
 というのも、菊池は3回表、先頭の2番・ピンダーに左翼前安打を浴びてから3番のチャップマン、デービス、ピスコッティを三者連続三振に切って取っている。結果だけを見ると、圧倒的なピッチングに見えるのだが、その際に、チャップマンには7球、デービスには9球、ピスコッティには6球を投じていた。つまり、それほど多くのボールを見せていたのだ。
 
 デービスには、9球のうち半数以上の6球がスライダーだった。6回表は、そのスライダーを狙われたのである。
 
 もっとも、あの場面でスライダーを選んだことは間違いではないだろう。カウント0−2と追い込んでいたし、その前の打席で三振を取っている球種を選ぶというのはセオリーと言える。
 
 しかし、試合展開をもう少し見極める必要はあったのかもしれない。
 
 1−1の投手戦の展開の中で試合を決めるのは、致命的なミスかホームランだ。相手が4番打者と考えると、もう少し大胆な攻めが必要だった。
 
 ただ、言い換えれば、それがメジャーリーグのバッターだとも言える。第2打席で三振をした際に、5球連続スライダーを見せられた打者が何を考えるか。試合展開を考えれば、三振をすることはそれほど大きなマイナスにはならない。ならば、思い切って、前の打席で多く見たスライダー、三振を取られた球を狙いに行くという割り切りは勝負事ではよくあることだ。
 
 菊池は7回表にも、一発を浴び降板した。3つの本塁打を浴び、そのどれもが意味のある本塁打となった。これは投手として、悔いの残るピッチングだったはずである。
 
 それでも負けはつかなかったのは事実だ。
 しかし、クオリティースタートをキープしたとはいえ、先発投手同士での投げ合いにフィーチャーすれば、菊池は敗れたと言っていい。この反省をどう生かせるか。菊池が次のステージの投手に進むためのポイントになったに違いない。
 
 
氏原英明