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レイズ、本拠地球場を完全キャッシュレス化 “伝統的ボールパーク”からの脱却は経営難を救うか

2019/02/02

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売り手側の負担軽減も、低所得者層は締め出し?

 タンパベイ・レイズが、2019年シーズンから本拠地であるトロピカーナ・フィールドにおいて、施設内でのグッズ販売や飲食代を含む全ての売買から現金取引を完全に廃止すると発表した。
 
 同球場で観客が使用できるのはクレジットカード、シーズンチケットホルダー専用カード、あるいはApple Payなどの電子マネーに限定される。それらを持たない人は球場専用の10ドル(約1100円)か20ドル(約2200円)のギフトカードを購入して使用することが出来るとされているが、ギフトカードの残金が返金されるかどうかなどの詳しいルールは不明のままだ。
 
 キャッスレス化の動き自体は目新しいものではない。既にトロピカーナ・フィールドは2018年シーズンから駐車場に限っては現金を受け付けていない。だが、施設全体の完全なキャッスレス化はメジャーリーグに限らず、全米のあらゆるメジャーなスポーツ施設でも未だに例がない。2019年の米プロアメリカン・フットボールのNo.1決定戦「スーパーボウル」でさえ、カード専用窓口は全体の50%に留まるとされている。
 
 現金のやり取りをなくすことで、レジでの平均待ち時間は短縮されると見られるし、おつりの計算間違いや紛失などのトラブルもなくなる。売り手側の負担は明らかに軽減される。日本に比べると、もともと米国はクレジットカードの使用率が高く、キャッスレス化による混乱や反発はさほど大きくないかもしれない。
 
 それでも低所得者層への影響は大きい。大手雑誌『The Atlantic』が2016年に行った調査によると、米国における総世帯数のうち7%は銀行口座そのものを持っていない。クレジットカードを持たない人となるとその数はさらに増える。今回の決定は事実上、そうした人達を球場から締め出すことになるだろう。
 
 また、クレジットカードを持たない若年層のファンも球場内で自分で買い物がすることが出来なくなる。もし子供が喉が渇いてドリンクを買いたくなっても、親は子供に小遣いを渡すのではなく、売店までついていってクレジットカードで支払いをしなくてはいけないのだ。
 
 観客席に座ってゲームを観戦していると、ピーナッツの売り子が大声で叫びながら通路をやってくる。売り子にピーナッツを頼むと、遠くから投げてくれる。代金を同じ列の観客に頼んでバケツリレーで渡してもらうと、おつりもまたバケツリレーで返ってくる。そんな古き良きボールパークの伝統的な風景も姿を消すことになる。

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