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カノー薬物規定違反…効果と禁止の背景とは。“暗黙のルール”への影響も「疑わしきは…」

MLBは15日(日本時間16日)、シアトル・マリナーズのロビンソン・カノー内野手に対し、薬物規定違反で80試合の出場停止処分を科した。禁止薬物「フロセミド」の陽性反応を示したためだが、本人には禁止薬物の認識はなかったという。では、フロセミドの使用にはどのような意図があったのか。筆者の専門であるスポーツ生理学の視点を交えて考えたい。

2018/05/17

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明らかになっていない禁止薬物投薬の理由

 MLBは15日(同16日)、シアトル・マリナーズのロビンソン・カノー内野手の薬物規定違反に対し、レギュラーシーズン80試合の出場停止処分を科した。この処分により、カノーは今季年俸約24億円の半分近くを失い、オールスターゲームとポスト・シーズンの出場資格も失った。今回の発表は、カノーが右手へ死球を受け、骨折により10日間の故障者リスト(DL)入りした13日(同14日)からわずか2日後のことだった。
 
 メジャーリーグ選手会が公表した声明によると、カノーが使用を認めたのは利尿剤「フロセミド」で、母国ドミニカ共和国の医師に処方された。本人に禁止薬物であるという認識はなかったという。カノーは声明の中で、過去に運動能力を向上させる禁止薬物を摂取したことは一度もないと述べている。
 
 フロセミドは、主に心不全や肝硬変の治療に使われる利尿剤で「ラシックス」という製品名で知られている。つい最近まで日本でも個人輸入などで入手することができ、米国内でもドミニカ共和国でも合法である。
 
 それにも関わらず、フロセミドが世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の禁止薬物リストに入っている背景には2つの理由がある。
 
 アスリートが利尿剤を使用する理由として、水分を大量に排出しての急激な減量目的、もしくはアナボリック・ステロイドなど他の禁止薬物の使用の隠ぺい目的が挙げられる。減量目的の使用は、体重制限のある格闘技やウエイトリフティングの選手、さらに競馬騎手などに多く見られる。今回のカノーが疑われていたのは、他の禁止薬物の使用隠ぺいである。
 
 しかし、カノーは禁止薬物の使用を否定。本人の声明を信じるなら、フロセミドが禁止されているとは知らずに投薬を受けたことになる。ならば、なぜカノーに利尿剤が必要だったのか。その理由については何の説明もない。心不全や肝硬変などの治療を受けていたのか、それとも何らかの理由で急激な減量が必要だったのか。
 
 どちらでもないのであれば、他の禁止薬物を使用していたのではないかという疑惑がついて回るだろう。
 
 ただ、フロセミドの使用については正式なペナルティが科され、カノーも処分を受け入れた。ルールとしては解決済みだ。仮に過去に禁止薬物を使用していたとしても、物証は文字通り“流されて”しまっている。

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