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大谷翔平、元通訳・水原一平氏の違法賭博騒動から見える“危うさ”とは? MLBが取る対策は…【第2回】

2024/04/01

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ドジャース・大谷翔平(左)と水原一平元通訳

 ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が3月25日(日本時間26日)、自身の通訳を務めた水原一平氏の違法賭博関与の発覚に伴い、初めて記者会見に応じた。だが、賭博に関することは、疑問が残る内容も多くあった。ここでは、プロスポーツにおけるコンプライアンスとガバナンスの観点から、今回の騒動を解説していく。

 

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日本人選手が海外で活躍するための“障害”とは

 大谷選手と元通訳・水原一平氏の違法賭博に関する事件は捜査が動き出している。大谷選手のようなスター選手に関わることなので、クローズアップの度合いも世界規模で大きい。疑問に思うのは、このような大事になる前に、対処できなかったのか、という点だ。
 
 元通訳を雇わなければこうならなかったが、大谷選手の語学対応のみならず公私共におけるサポートが必要だった、それが水原氏に代えがたかった、その水原氏が私生活に問題を抱え、そばにいる富裕者、大谷選手の懐へ介入したというのが、大まかな背景になるだろう。
 

 
 語学の問題に焦点をあてて話をすると、日本人のアスリートはこの課題を抱えてしまうのが顕著だ。日本全体の英会話能力は世界的にも「話せない」レベルだろう。比べて隣の韓国の英会話能力はおおむね高い。国の教育政策の違いなのだろうが、かねてから指摘されているように日本人の英会話能力の低さは、明らかだ。
 
 例えば、NFL(プロフットボール)で、日本人選手が出てこない、大きな要因の一つがこの語学に関することだ。フットボールは細かいしかもいくつかに分かれたパターンの攻撃、守備体系をその場に応じて、合わせていく必要があり、その際語学がネイティブに近い状態でないと、理解ができない。フィジカル的には日本人はNFLレベルにいる者がこれまでもいた(特にキッカーとパンター、スペシャルチームのリターナー)しかし、語学力のことがたびたびチーム関係者からはネックになっていることが指摘されている。
 
 MLBでは、通訳の同伴が可能なので、こうしたことが可能なのだろうが、今回はそれが逆に弊害になったという皮肉な状態だ。スター選手における自らの好みや意向に沿った内容、また人選が基本的に優先されている。それをチームが了承する代わりに入団も受け入れているような格好だ。
 
 これが一般企業ならどうだろう。一社員がものすごく営業利益を上げ、「広告塔」として会社の利益に貢献してくれるなら、人事に関することや福利厚生面でも、本人の介入がここまで進むのだろうか。もし仮に特別扱いするにしても、それは社外でしてもらうことが、コンプライアンス上正常な対応になるだろう。社内で入れたい人材を入れること、そこに、自分の給与口座を他者が操作できるような状態にするならば、逆にペナルティを受けて当然だろう。企業の正常なコンプライアンスはそういうものだ。
 
 それがプロスポーツ、とりわけスター選手を取り巻く環境は逆転している。そうでもしないと、スター選手が入団してくれないからだ。様々な条件をチームが飲むことと、そこにコンプライアンスがなし崩し的にされている現状がある。スター選手は「お得意様」であり「大事なお客様」でもある風潮に、一石を投じる必要がある。MLBは機構としてもガイドラインを設ける必要がある。

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