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高木勇人はメキシコに残る決断。開幕予定日白紙も「前向きな気持ち」、通訳がコロナ禍の現状語る

2020/04/23

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「うまく溶け込んでいけそうだなと思っていた」

 コロナウイルス感染拡大の影響を受け、日本、アメリカ両国でいまだ開幕の見通しが立たないのと同様に、メキシコ球界もまたリーグ開幕延期を余儀なくされている。日本にあまり情報の入ってこない、メキシコ球界は今どのような状況なのだろうか。今季メキシカンリーグのレオネス・デ・ユカタンの一員となった高木勇人投手の通訳を務める藤田直人さんがその現状を語ってくれた。
 

 
 4月14日に日本に一時帰国し、現在ホテルに隔離滞在中という藤田さんに、波乱の一カ月を語ってもらった。
 
「まず、私たちは3月5日にキャンプ地でもある本拠地メリダに入りました。この時点ではまだメキシコ国内でウイルスは大きな問題となっておらず、通常通り4月上旬に開幕する予定でした。ところが徐々にウイルスの影響が拡大し、3月14日に開幕の延期が発表され、翌日以降のキャンプも打ち切りとなりました。
 
10日足らずのキャンプでしたが、勇人さんはチームメイトと積極的にコミュニケーションを取っていましたし、うまく溶け込んでいけそうだなと思っていたので非常に残念です。プレー面でも、ここから上げていこうという段階だったので勇人さんも悔しいはずです。
 
キャンプが打ち切りになってからは、近くの公園でキャッチボールをしたり、自室でトレーニングをしていました。ただ、時間とともに、様々な面で制限が大きくなり、公園も立ち入り禁止になり、ジムも閉鎖され、今できるのは自室でのトレーニングのみという状況です。
 
メキシコというお国柄もあり、治安を心配してくれる方も多いですが、私たちの住む街は思ったよりも落ち着いています。レストラン、娯楽施設は閉まっています。しかし、入場制限こそありますがスーパーでは買い物もできるので日常生活に困ることはありませんでした。
 
当初は5月11日とされていた開幕予定日も白紙となり、今では7月にズレ込むという噂です。何も動けない状況の中で、チームの活動休止中は給料もストップするということ、安全面、医療面への心配もあり、チームの外国人選手もそれぞれの国へ帰国しました。そして私自身も、メキシコに残る決断をされた勇人さんには大変申し訳ないですが、この度一時帰国を選択させてもらいました」
 
 「今はただ終息を待つしかないです」という藤田さんの言葉が重く響く。それは、強い想いを持ってメキシコ挑戦に臨む高木投手も同様の気持ちであろう。それでも藤田さんの「こういう状況ですが、勇人さんが前向きな気持ちであるのは救いです」という言葉は安心させてくれるものだ。日本からも多くのファンが、高木投手のメキシコデビューが1日でも早く実現すること願っている。
 
 
高橋康光