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県立の進学校で説く骨(コツ)の重要性――「打撃伝道師」佐相監督が語る激戦区神奈川を勝ち抜く指導論<Part1>

昨年、夏としては初のベスト4入りを果たした県立相模原。強豪校の激戦区神奈川でいかにして勝ちあがっていったのか。「打撃伝道師」と呼ばれる佐相眞澄監督流の指導論をまとめた一冊、『打撃伝道師 神奈川から甲子園へ――県立相模原で説く「コツ」の教え』(佐相眞澄著)から一部抜粋で公開。

2020/02/20

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初の夏ベスト4入りで横浜の4連覇を阻止

 2019年夏の神奈川大会準々決勝において、これまで一度も勝てなかった横浜に初めて勝つことができた。終盤まで0対5の劣勢も、7回に5点、8回に3点を奪って、8対6の逆転勝ち。9回表に無死一、二塁のピンチを迎えるも、エース天池空を中心にした守備陣がよく守り、夏の神奈川大会4連覇を狙った横浜を下した。県立相模原にとっても私にとっても、初の夏のベスト4入りとなった。
 
 横浜、東海大相模、慶応義塾、桐光学園のことを、私は神奈川の「四天王」と勝手に位置付けている。四天王を倒さなければ、甲子園は見えてこない。私立の強打線を抑えるのは難しいので、ある程度の失点は覚悟したうえで、打ち勝つしかない。あの横浜戦の終盤は、思い描いていたとおりの展開となった。
 
 印象深いのが、7回の風間龍斗のタイムリー二塁打と、8回に飛び出た中野夏生の逆転二塁打である。いずれも、高めの失投をとらえたもので、入学時から「高めのレベルスイング」を徹底して練習してきた成果を、大舞台で発揮することができた。
 
 8点取られたら、9点取る。それが、私のスタイルである。高校野球の監督になる前に、相模原市内の中学校で24年間、監督を務めていたが、そのときから〝打ち勝つ野球〞を追求してきた。全国各地の指導者講習会で打撃指導の講師を務めたこともあり、本書のタイトルにもあるように、「打撃伝道師」と呼んでいただけるようにもなった。
 
 聞くところによると、横浜が夏の大会で県立高校に敗れるのは1990年以来のことだという。県相模原の選手の中には、校歌を歌いながらうれし涙を流している選手もいた。ただ、私はというと、不思議なもので冷静だった。知り合いのライターからは、「泣くかと思いました」と言われたが、決して甲子園出場が決まったわけではない。翌々日には準決勝がある。相手は、横浜と並ぶ全国屈指の強豪・東海大相模だ。勝利の喜びをかみしめながらも、次戦を考えている自分がいた。

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