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一時代の終わり――故障者続出、9人で試合に臨まざるを得なかったPL学園

休部が決定しているPL学園、2016年7月22日、東大阪市・花園球場には関係者や高校野球ファンら多くの観客が詰めかけた。

2016/07/26

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山岡則夫

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ケガ人続出

 2006年7月29日、大阪・万博球場。
 第88回全国高等学校選手権大会、大阪府大会準々決勝が行われた。優勝候補筆頭のPL学園(以下PL)は東大阪大柏原と対戦。PLはエース前田健太(現ドジャース)をレフトに温存したが、2回までに1-8と大量リードを許す。急遽、前田が登板、自身も5回に満塁本塁打を放つが、結果6-9と追い付けず。前田の最後の夏が終わった。

 あの日と同じ匂いがした。

 10年後、2016年7月22日、東大阪市・花園球場、府大会1回戦。
 肌寒いほど気温が低く、時折、小雨がぱらつく、同じような天気だった。しかし状況はまったく異なる。この大会を最後に、名門・PL野球部は休部することが決まっているのだ。
対戦相手は……、東大阪大柏原。

 試合前日、PLグラウンドを訪れた。
 最寄り駅、南大阪線の富田林駅からバスに乗り、途中、有名なPLタワーを見ながら10分ほどで到着する。受付を済ませグラウンドに近付くと、号泣する声が聞こえた。「まさか……」と思った瞬間、飛び込んで来た光景に絶句した。一塁側ベンチ裏に仰向けになって泣きじゃくる選手と、それを取り巻く関係者。

「たった今、選手同士でぶつかってケガをして……足です。ヒドくなければ良いのですが…」。関係者の車で病院へと向かって行った。

 その間もグラウンド内では選手たちは黙々と打撃練習を行っていた。その数8人。2人が打撃練習マシンにボールを入れ、6人がローテーションで打ち込む。しかし球拾いをする者は誰一人いない。多くのボールが外野のはげた芝生の上に転がっていた。

 荒木大輔(元スワローズ)らの早稲田実業(当時東東京、現西東京)。水野雄仁(元ジャイアンツ)らの池田(徳島)。桑田真澄、清原和博(元ジャイアンツ)らのPL。この3チームは野球少年たちにとって、プロと同等な憧れだった。その「名門」PLにとって、この夏は特別なものになる。

 度重なる不祥事や学園の方針なども重なり、2015年から部員の新規募集を中止。現在の12人の3年生部員が引退するとともに部の休止を公式に発表した。その中の1人は記録員であるため実質11人。この日ケガをした部員(試合前日に骨折という最悪の結果)を含め2人が故障しているため、つまり9人での戦いになってしまった(しかもそのうちの1人は肩の故障でボールをほとんど投げられない状態)。

 つまり試合中にアクシデントが起きても交代できる選手すらいないのだ。

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