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四国アイランドリーグplus理事長・鍵山誠の新球場構想。地方球場はボールパーク化で町おこし

四国アイランドリーグplusの理事長である鍵山誠は、高松市の中心に新球場建設構想を抱いている。

2016/06/09

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Cスタ丸亀は地方球場の新しい形

 先月末、北海道日本ハムファイターズの新球場建設計画が話題になった。高額な賃料などは球団経営において大きな課題となっていたからだ。
 一方スポーツビジネスの本場、アメリカでは、MLB球団が本拠地移転をちらつかせて自治体に新スタジアムを建設させるのは日常の風景である。メジャーだけではない、マイナーリーグ、独立リーグでも、新球場建設を条件にした移転が頻繁に行われている。税金によって建設されたスタジアムが無償に近い形で球団に貸し出されることに対しては、批判がないこともないが、このようなムーブメントが今に至るまで続いているのは、地域住民の多くがプロ球団存在のメリットを感じ取っているからであろう。
 実際、マイナーレベルでも、田舎町のボールパークが、その周辺に建設されたショッピングモールなどとともに地域活性化に不可欠な集客施設として機能している。

 日本でもこのようなムーブメントを起こそうと動き始めているのが、四国アイランドリーグplusの理事長である鍵山誠だ。

 四国コカコーラボトリングスタジアム丸亀(Cスタ丸亀)の名を知っている野球ファンは多くはないだろう。昨年3月にできたこの球場ではプロ野球の一軍戦が行われることはない。収容人員が1万人と少ないためである。昨今、地方球場もイノベーションが進み、外野スタンドに大きなスコアボードを備えた2~3万規模というものが多くなってきたが、丸亀市は小さいながらもエンタテイメント性があり、市民が気軽にプレーもできるスタジアムを建設した。収容1万といっても、椅子のある内野スタンドのキャパシティは5000人しかない。これまで各地に新設された地方球場は、大観衆を収容できる2層スタンドを備え、そのスタンドを埋めるべく年数回プロ野球(NPB)の公式戦を誘致してきたが、丸亀はそれを目指すことをせず、11万という人口に見合った持続可能なスタジアムにたどり着いた。

 鍵山は、この球場を「ボールパーク」と呼ぶ。10年以上独立リーグの経営に携わってきた鍵山は、何度もアメリカに足を運び、野球の本場のボールパークを目に焼き付けてきた。丸亀市から、新球場建設について意見を求められた際、彼は自身の経験から様々な意見を担当者にぶつけた。

 地方球場では、観客の快適性が置き去りにされていたと鍵山は独立リーグ経営の中で感じてきた。

「四国はアイランドリーグができるまでプロ興行がなかったところでしょ。選手目線からロッカールームを充実しようとかの発想はあったと思いますけど、お客さんにとって快適なものが造られてはいないと思ってました。だから、相談を受けた時に、いろいろアイデアを出させていただいたんです。アメリカではいろんな球場に足を運びましたが、その中に、今でも交流させていただいているセントポール・セインツっていうアメリカの独立リーグでも1、2を争う人気球団があるんです。そこのボールパークはとても楽しいんです。それで、ああいうものを四国でもできるんじゃないですかってご提案申し上げたら、市の方も資料を取り寄せたり、いろんな球場を見に行ってくれて、それでできあがったのがこのボールパークです。100点満点じゃないかもしれないですけど、僕らにしてみれば、これは独立リーグにはぴったりだなって」

 アメリカの独立リーグの採算ベースは1試合当たり5000人の観客動員だと言われている。入場料収入よりむしろスポンサー収入に頼っている日本の独立リーグとは事情は異なるものの、Cスタの内野スタンドのキャパシティは、まさにこの球場が、独立リーグのフランチャイズを想定して造られたことを示している。実際、この球場はアイランドリーグの香川オリーブガイナーズが準本拠地として使用している。

 この球場には、鍵山のアイデアが随所に盛り込まれている。地方球場には珍しいフィールドシートからは、ベンチの様子を見ることができるし、1塁側スタンドの端のテラス席ではバーベキューをしながらの野球観戦を楽しむことができる。そして、バックスクリーンの奥にそびえる最新鋭のLEDボード。アイランドリーグの試合では、DJとともに選手の顔写真が大きく映し出され、NPBの試合さながらの雰囲気を味わうことができる。

「これも、最初はやっぱり野球場ってことで普通のスコアボードだったんですよ。でも、金額聞くと、LEDボードでもほとんど一緒なんですよ。だったら、いろんなことに使えますからLEDにしましょうと提案したんです」

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